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沖縄県民投票と基地問題を世界はどう見ているのか

安全保障だけでなく民主主義、環境、人権といった世界の「共通語」で語られる沖縄問題

星野英一 琉球大学名誉教授 同大島嶼地域科学研究所客員研究員

日本政府の対応に批判的?なアジアのメディア

 アジアの報道はどうだろう。

 シンガポール紙「ストレイツ・タイムズ」は投票前の記事(2月22日、Abe to ignore controversial Okinawa referendum on US base move)だが、安倍政権が裁判にまで持ち込んで沖縄に言うことを聞かせようとしている点にふれ、日本政府が県民投票の結果を無視しようとしているとも伝えている。

ホワイトハウス前で辺野古移設に対し抗議運動をするロバート・カジワラ氏=2019年1月7日、ワシントン拡大ホワイトハウス前で辺野古移設に対し抗議運動をするロバート・カジワラ氏=2019年1月7日、ワシントン
 オンライン請願署名を始めたハワイ在住で沖縄出身者の血を引く日系四世の作曲家ロバート・カジワラ氏のことや、カジワラ氏が関西国際空港で身柄拘束されたことにも言及し、基地の危険(犯罪、事件、事故)、辺野古新基地の環境負荷、沖縄の過去の軍事的重荷、基地の集中など幅広い記述があるので、最後の「もし県民の多くが反対票を投じても、政府がこれを強行すると、ある意味とても非民主的に見えるだろう」という安全保障専門家の政府擁護の発言が、政府批判のように読める。

 マレーシア紙「ザ・スター」はAFP通信による記事(2月24日、Japan's Okinawa votes on controversial US base move)だが、「これは日本の民主主義が機能しているかどうかのテストケースだ」との専門家の発言を紹介している。最後は、日米安保と沖縄の地政学的な重要性にふれて締めくくっているが、「政府は沖縄をバカにしている」との発言や、朝日新聞の世論調査で「政府は県民投票の結果を尊重せよ」が80%にのぼるとの結果も紹介している。香港紙「サウス・チャイナ・モーニング・ポスト」(2月24日、Okinawa votes ‘no’ in referendum on US military base move)やカタールの国営TV「アルジャジーラ」(2月24日、'Test of democracy': Okinawa votes in referendum on US base)も基本的に同じ内容だ。

 話がそれるが、「アルジャジーラ」が紹介している在日米軍報道官の発言、「我々は沖縄の人々と良い関係を維持しようと努力している。毎日、彼らの関心事と我々の準備態勢を維持する必要とのバランスをとるようできる限りのことをしている」は、中東の人々にどう受け止められるか気になった。イラクやアフガニスタンの米軍に対して人々がそうは見えないと感じるなら、沖縄における米軍の対応も大同小異だろうと、報道官の言葉を眉につばを付けて聞くのではないだろうか。

普天間が返還されぬ可能性に触れた「チャイナーデイリー」

 話を戻す。

 中国の英字紙「チャイナ・デイリー」(2月24日、Okinawa votes in referendum on US military base relocation)はAP通信によるニュースだが、その扱いに特色がみられた。まず、県民投票に対し、日本本土だけでなく世界の平和運動家からも関心が寄せられているとの記述があり、新基地建設についても建設費用が膨らみ続けていること、滑走路が短いため普天間が返還されないかもしれない可能性にもふれている。さらに、県外移設の話が出ては消えることについて、沖縄の人々に差別(second-class treatment)されているとの思いを持たせているとも書いている。

 以上、県民投票をめぐる海外のメディアを渉猟してみると、「民意は示されたが、政府は建設を進める方針である」という「筋」の話だけでなく、沖縄の基地問題にからみ、「沖縄の人々が民主主義のテストケースを提供している」「政府が非民主的であることを照らし出している」「沖縄の人々は差別され、バカにされている」「沖縄のNIMBY的主張もある」など、さまざまな見方が示されていることがわかる。この問題をめぐっては、米軍基地の事情、沖縄の主張、民主主義のあり方など、重層的な論点があることが、あらためて浮かび上がって興味深い。

 ついでなので、アメリカのメディアに限るが、昨秋の玉城デニー知事誕生に関わる記事もみておこう。

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筆者

星野英一

星野英一(ほしの・えいいち) 琉球大学名誉教授 同大島嶼地域科学研究所客員研究員

1953年、東京都生まれ。上智大学外国語学部卒業、成蹊大学法学政治学研究科修了、デンバー大学国際学大学院修了。琉球大学短期大学部助教授、法文学部教授、東京女子大学教授、琉球大学人文社会学部学部長を経て現職。専門は国際関係学、国際政治経済論。著書に『沖縄平和論のアジェンダ』(法律文化社、共著)、『Debating Human Rights』(Rutledge、共著)、共編著に『Self-determinable Development of Small Islands』(Springer)等。

※プロフィールは、論座に執筆した当時のものです