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ミサイルは新型ASBM、北朝鮮版A2AD戦略

米朝協議停滞で「開発成果」を確認できる時が来た。はたして米空母を攻撃できるのか?

牧野愛博 朝日新聞記者(朝鮮半島・日米関係担当)

「開発の成果」を確認できる時が来た

拡大北朝鮮が5月4日に日本海上で行った軍事訓練を指導する金正恩朝鮮労働党委員長=労働新聞のホームページから
  韓国国防研究院で北朝鮮軍事を研究した金振武・韓国淑明女子大国際関係大学院教授によれば、北朝鮮は2016年3月に行った新型多連装ロケットの発射実験のころから、戦術誘導兵器の試射に力を入れてきたという。

 当時の朝鮮中央通信の報道をみれば、正恩氏は「過去3年間の研究開発事業を精力的に率いた」という記述がある。すなわち、2013年ごろから正恩氏は戦術誘導兵器の開発に力を入れてきたことになる。

 そのうちの切り札が、この北朝鮮版イスカンデル地対艦弾道ミサイルだというわけだ。

 北朝鮮が地対艦弾道ミサイルの開発に力を入れる背景には、朝鮮戦争の教訓がある。朝鮮戦争では、世に名高い仁川上陸作戦を契機に、戦況が北朝鮮軍に不利に傾いたからだ。

 更に、近年では、米軍が春の米韓合同軍事演習などの際に、米原子力空母も派遣し、韓国・浦項沖などで上陸演習を繰り返した。2017年秋には、米空母3隻が相次ぎ、日本海に現れたこともあった。

 北朝鮮が「先端戦術兵器の実験を行った」と発表した2018年11月は、まだ米朝協議が進行中だった。北朝鮮としては米国との交渉が最優先だった時期で、おそらく交渉を壊さないために、実験の詳細は伏せたと思われる。ただ、開発は米朝会談が進行している際もずっと続いていたが、おもてだった実験は避けていたのだろう。

 これに比べ、現在、3回目の米朝首脳会談開催のめどは立っていない。東シナ海では、日米韓などが北朝鮮の「瀬取り」を駆使した石油の密輸を監視する作戦を実施している。

 北朝鮮としては、各種メディアが報じているように、米国を対話に引き出したい思惑もあっただろうが、同時に、交渉が当面再開できない状況を逆に利用し、国連制裁決議違反になる短距離弾道ミサイルの発射実験に踏み切ったと言える。

 ようやく「開発の成果」を確認できる時期が到来したというわけだ。

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筆者

牧野愛博

牧野愛博(まきの・よしひろ) 朝日新聞記者(朝鮮半島・日米関係担当)

1965年生まれ。早稲田大学法学部卒。大阪商船三井船舶(現・商船三井)勤務を経て1991年、朝日新聞入社。瀬戸通信局、政治部、販売局、機動特派員兼国際報道部次長、全米民主主義基金(NED)客員研究員、ソウル支局長などを経験。著書に「絶望の韓国」(文春新書)、「金正恩の核が北朝鮮を滅ぼす日」(講談社+α新書)、「ルポ金正恩とトランプ」(朝日新聞出版)など。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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