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北朝鮮が発射した短距離ミサイルの正体

金正恩委員長が瀬戸際外交の本領発揮

高橋 浩祐 国際ジャーナリスト

2018年2月に登場していた新型ミサイル

 実は、北朝鮮が4日と9日に発射した新型ミサイルと似たものは、北朝鮮軍創建70周年を記念して2018年2月8日に平壌で行われた軍事パレードでも登場していた。

 しかし、5月発射のそれらのミサイルを搭載した移動式発射台(TEL)は、その軍事パレードで登場したTELとは違っていた。

 5月4日は装輪(タイヤ)式、9日は装軌(キャタピラー)式のTELがそれぞれ発射に使われていた。4日の装輪式TELは、フロント窓枠が3つあるなど、ベラルーシの国営企業ミンスク自動車工場製のMZKT-7930 ASTROLOGトラックをベースにした、9K720「イスカンデルM」「イスカンデルE」用ランチャーの9P78-1と9P78-1Eに酷似していた。

 そもそもロシアの9K720イスカンデルは、ミサイル2基が発射台ごとトラックの荷台に搭載され、風雨から守るためにも折りたたみ式の扉で覆われ、発射時には扉を開き、ミサイルを起立させるものだ。

 一方、2018年の軍事パレードに登場した6両のTELは、同じ4軸装輪式(8輪駆動)ではあったが、フロント窓枠が2個であるなど、形状が違っていた。ジェーンズでは、これらの軍事パレードで登場した6両が北朝鮮の国内向けの輸送用ローダーか、本物のTELに見せかけた単なるモックアップだった可能性があるとみている。

北朝鮮版ASBMの是非

 さて、今回発射されたミサイルが北朝鮮版の地対艦弾道ミサイル(ASBM)とみる向きがあるが、ジェーンズのミサイル専門家を含め、多くの軍事専門家はその見方に懐疑的だ。

 そもそも今回発射されたミサイルの形状がASBMに見えないうえに、軍艦のような動く標的に対して制御誘導されながら飛翔する弾道ミサイルの製造は極めて難しい。また、北朝鮮には、射程は今回発射されたミサイルよりは短いものの、「金星(クムソン)3」と呼ばれる沿岸防御巡航ミサイル(CDCM)がすでに存在している。

 ドイツのミュンヘン在住のミサイル専門家、マーカス・シラー博士は筆者の取材に対し、次のように答えている。

 「今回発射のミサイルが地対艦弾道ミサイル(ASBM)と解釈されているとは私にとっては初めて聞くことだ。しかし、ロシアの(弾道ミサイルの)キンジャールが、空中発射のイスカンデル以外の何物でもないことを考えると、その解釈もそれほど的を外れてはいない。ロシアはキンジャールが対艦ミサイルだと主張している。とはいえ、もともとのイスカンデルは地対地ミサイルだけの役目を負っていた」

 「北朝鮮がロシア製の対艦ミサイルを手に入れたとしても、 ・・・ログインして読む
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筆者

高橋 浩祐

高橋 浩祐(たかはし・こうすけ) 国際ジャーナリスト

英国の軍事専門誌「ジェーンズ・ディフェンス・ウィークリー」東京特派員。1993年3月慶応大学経済学部卒、2003年12月米国コロンビア大学大学院でジャーナリズム、国際関係公共政策の修士号取得。ハフィントンポスト日本版編集長や日経CNBCコメンテーターを歴任。朝日新聞社、ブルームバーグ・ニューズ、 ウォール・ストリート・ジャーナル日本版、ロイター通信で記者や編集者を務める。

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