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MMT(現代貨幣理論)なんてあり得ない!

いま話題の経済理論。本当ならあまりに都合がいいけれど……

米山隆一 前新潟県知事。弁護士・医学博士

新しくもなんでもないMTTの五つの主張

 1を、MMT論者は「地動説」的と主張しますが、そもそも「地動説」に立っても、運動は相対的、地球が太陽に対して動いているとも、太陽が地球に対して動いているとも言い得ます。

 預金が貸し出しを作るのか、貸し出しが預金を作るのかも同じ話で、同じ物事をどちらから見ているかに過ぎません。標準的経済学でも預金が貸し出しによって生まれると考えることもあり、特段新しい考え方ではありません。

Sakarin Sawasdinaka/shutterstock.com拡大Sakarin Sawasdinaka/shutterstock.com
 2は、言うまでもなく当然で、どんなにインフレが進もうが、国家権力が国家権力である限り、お札を刷って支払いをすることは可能です。これを否定する経済学はありません。

 3も、(民間貯蓄超過)=(政府財政赤字)+(経常収支黒字)と言う標準的ケインズ経済学からの当然の帰結です。何も新しくありません。

 4は標準的経済学と違うように見えますが、それは標準的経済学では、財政赤字をファイナンスするための資金を、赤字国債を市中に売却することで調達するからです。この場合政府は、赤字国債を売って民間から通貨を受けとり、それを使いますから通貨供給量は変わりません。

 しかしMMTでは、暗黙のうちに、発行した赤字国債を中央銀行が直接引き受けるか、現在日銀がやっている「異次元の金融緩和」のようなことをして、ほぼ全量を買い取ることが前提となっています。そうなれば日銀の保有する通貨が新たに市中に供給されますから、当然通貨供給量は増えます。従って財政赤字で通貨供給量が増えるかどうかは、財政赤字をファイナンスする為の赤字国債をどう発行するか(発行した後どうするか)の手段の違いによる帰結であって、理論の違いによる帰結ではありません。

 54と同じことで、標準的経済学では、赤字国債を市中に売却するので、民間の資金が政府に吸収されて逼迫(ひっぱく)し、債権の値段が下がって金利が上昇します。

 しかし、例によってMMTが暗黙のうちに前提としている、中央銀行の赤字国債の直接引き受けや「異次元の金融緩和」でほぼ全量買いとってしまえば、資金が市中に供給され、債権の値段が上がって金利は上がりません。ここでも、金利が上がるかどうかは、赤字国債をどう発行するか(発行した後どうするか)という手段の違いによる帰結であって、理論の違いによる帰結ではないのです。

 つまり、MMTの「地動説」的新理論(新事実)と言われている1~5は、新理論でも新事実なんでもなく、単に信用創造を逆の方向から見ているか、若しくは「赤字国債を日銀が直接引き受ける(大量に買う)かどうか。」の違いなのです。

 なお、15の帰結から、「赤字国債を直接中央銀行が引き受ける、すなわち国が直接お金を刷るなら、インフレが起こるまでの間は、財政赤字によって、通貨供給量が増え、金利は上がらず、民間の貯蓄が増える」という、ずいぶんお得なことが起こるのですが、あるところを超えるとインフレが起こります。これは直感的には少々分かり難いので、私のHPに「山田家の肩叩き券によるMMTモデル」を記載しました。よかったら併せてご覧ください)

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筆者

米山隆一

米山隆一(よねやま・りゅういち) 前新潟県知事。弁護士・医学博士

1967年生まれ。東京大学医学部卒業。東京大学医学系研究科単位取得退学 (2003年医学博士)。独立行政法人放射線医学総合研究所勤務 、ハーバード大学附属マサチューセッツ総合病院研究員、 東京大学先端科学技術研究センター医療政策人材養成講座特任講師、最高裁判所司法修習生、医療法人社団太陽会理事長などを経て、2016年に新潟県知事選に当選。18年4月までつとめる。2012年から弁護士法人おおたか総合法律事務所代表弁護士。

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