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テレビ売り場では、「即位後朝見の儀」の中継映像に男性が見入っていた=2019年5月1日拡大「令和」初日、テレビ各局は関連番組一色に=2019年5月1日

4月30日(火) 朝、ゴミ出しをしに外に出るとしとしとと雨が降っている。朝日新聞をみて、なるほどこのところの朝日はちょっとばかし奮っているなあ、と感じる。「令和」の元号が、首相の意向で選定案に最終的な段階で追加された経緯をすっぱ抜いている。

 早めに局に出て退位の日のテレビをモニターすることにする。テレビ朝日の「モーニングショー」がわりと面白かった。青木理や玉川徹という人物が出ていることの意味は大きいのかも。天皇退位の長い、長い一日の始まり。NHKやTBS、テレビ朝日などをザッピングしながらみたが、だんだんどうでもよくなってきた。午前10時からの皇居正殿松の間での儀式も、中での撮影は禁止されているので、出入りの時の服装にのみ着目した程度か。ここで行われているのは皇室の私的な儀式だ。

 原稿を書く必要から1947年文部省発行の「あたらしい憲法のはなし」を探すが、どこへ行ったのかみつからないのだ。それで神保町に買いに行ったら、途中、皇居前広場に多くの人々が雨の中を訪れていた。東京堂書店で書架を回っていると、『天皇陛下にささぐる言葉』(坂口安吾、景文館書店、200円)なる冊子をみつけさっそく購入。あっという間に読了。何しろ31ページしかないのだから。

平成最後の日、皇居外苑に集まった人たち=2019年4月30日20190430拡大平成最後の日、皇居外苑に多くの人が集まった=2019年4月30日

 午後3時過ぎから「報道特集」の特集で、原武史さんへの2度目のインタビュー。その後、「週刊現代」の校正後、「クレスコ」の原稿。退位する天皇は、国事行為として「退位礼正殿の儀」に臨み、「即位から30年、これまでの天皇としての務めを、国民への深い信頼と敬愛をもって行い得たことは、幸せなことでした。象徴としての私を受け入れ、支えてくれた国民に、心から感謝します」と述べた。ESPAでKさん。その後、思い立って自宅の書棚から三島由紀夫『英霊の聲』、澁澤龍彦『三島由紀夫おぼえがき』などを取り出して読む。実に面白い。天皇とは日本人にとって一体何なのかを考えなければ、今起きていることがらのほんとうのこと、日本人の古層のようなものはわからないのではないか。テレビはあまりに薄っぺらすぎる。

平成最後の日、渋谷スクランブル交差点の前で、ボードを掲げる女性=2019年4月30日拡大平成最後の日、渋谷スクランブル交差点は大騒ぎに=2019年4月30日

5月1日(水) 元号が変わって、令和の初日。朝一番の訃報で、遠藤ミチロウの死去を知る。何だかなあ。「プロジェクトFUKUSHIMA」立ち上げ当時のことを思い出す。僕が個人的に覚えているのは、渋谷の山手教会地下でやっていたソロライブを見た時の記憶だ。客が10人ちょっとしか入っておらず、しかしライブで歌われた曲が強烈な詞だったので、そこから動けなくなるほどだった。

 きのうの渋谷駅前のスクランブル交差点での24時の狂乱ぶりをテレビでみていて、その狂乱ぶりは、おそらく昨夜読んだ三島由紀夫が最も嫌悪した風景ではないかと思った。午前中は天気の方も何とか晴れている。東京駅で下車したら、丸の内口が混んでいた。皇居前広場に行く人々がこんなにいる。

 局で天皇の即位の儀式をテレビでモニターする。意外にあっさりしている。しかしテレビの基調は、とにかく奉祝一色だ。これは本当の意味で「報道」なのか。実は昨日から永井荷風の『墨東奇譚』の当時のままの復刻版を読みだして、面白くて一気に読んでしまったので、午前中は眠くて仕方がなかった。それでテレビのモニターをしていたら、うとうとと一瞬の眠りにおちてしまっていた。気がつくと、「国民の代表」として安倍首相が何かを述べているシーンだった。「御代(みよ)」とか「弥栄(いやさか)」という言葉が耳に入ってきた。新天皇の言葉は、簡にして要を得たコンパクトなものだったが、「憲法にのっとり」という言葉が入っていた。予め決まっていたことなのだろうが、上皇と上皇后はセレモニーには参列していなかった。そのことの重みがあった。不在の重み。すべてはTVショーとして進行していく。

 午後4時から、新橋で行われている天皇制に反対している人々の「新天皇いらない銀座デモ」前集会に取材に行く。天気が急変して雨が降り出している。会場はニュー新橋ビルの地下だが、小ホールに人が入りきれないで、はみ出していた。しかし皇居前広場の人々のあの数とは比較しようがない。どの地上波のテレビ局も取材に来ていない。会場で何人かの知己と話をする。

天皇制に反対する市民らが東京・銀座の通りをデモ行進した=東京都中央区201951拡大「令和」初日には、天皇制反対のデモ行進も=2019年5月1日、東京都中央区

 局に戻ってNHKの特番をみていたが、そこに出ている一部の皇室研究者のレベルが相当に低い。何だか安手のお笑いタレントみたいなのだ。明らかに「学識」のレベルが劣化している。すべての地上波テレビでは、新天皇の即位以外のニュースは「それではその他のニュースをお伝えします」と、まるで雑報扱いになっている。例えば、ベネズエラでグアイド大統領が軍と国民に蜂起を呼びかけたとのニュースも。これは時代の区切りの日とは言えない。

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筆者

金平茂紀

金平茂紀(かねひら・しげのり) TBS報道局記者、キャスター、ディレクター

TBS報道局記者・キャスター・ディレクター。1953年、北海道生まれ。東京大学文学部卒。1977年、TBSに入社、報道局社会部記者を経て、モスクワ支局長、「筑紫哲也NEWS23」担当デスク、ワシントン支局長、報道局長、アメリカ総局長、コロンビア大学客員研究員などを経て、2010年より「報道特集」キャスター。2004年、ボーン・上田記念国際記者賞受賞。著書に『沖縄ワジワジー通信』(七つ森書館)、『ロシアより愛を込めて――モスクワ特派員滞在日誌 1991-1994』(筑摩書房)、『二十三時的――NEWS23 diary 2000-2002』(スイッチ・パブリッシング)など。共著に『テレビはなぜおかしくなったのか<原発・慰安婦・生活保護・尖閣問題〉報道をめぐって>』(高文研)、『内心、「日本は戦争をしたらいい」と思っているあなたへ』(角川書店)など多数。

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