藤田直央(ふじた・なおたか) 朝日新聞編集委員(日本政治、外交、安全保障)
1972年生まれ。京都大学法学部卒。朝日新聞で主に政治部に所属。米ハーバード大学客員研究員、那覇総局員、外交・防衛担当キャップなどを経て2019年から現職。著書に北朝鮮問題での『エスカレーション』(岩波書店)、日独で取材した『ナショナリズムを陶冶する』(朝日新聞出版)
※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです
(下)「令和の国防」を安倍内閣で自衛隊制服組トップを4年半務めた河野克俊氏に聞く
前統幕長の言葉から探る「日米同盟の抑止力」/(上)「令和の国防」を安倍内閣で自衛隊制服組トップを4年半務めた河野克俊氏に聞く
安倍内閣で自衛隊制服組トップを4年半務めた河野克俊・前統合幕僚長(64)の証言は、「日米同盟の抑止力」という新たな概念に覆われていく「令和」の国防を浮き彫りにした。退任の翌5月の臨場感あふれるインタビューをもとに、日本の領域への侵入にまず自衛隊が対応する第1ステージから、米軍と連携して対応する第2ステージへ話を進める。
大陸から西へ行動範囲を広げる中国海空軍に対し、日本の防衛ではまず自衛隊が対処する態勢を整える。それが今世紀に不安定化が進んだ北東アジアでの「日米同盟の抑止力」の第1ステージといえることが、前回の(上)で紹介した河野氏の話からよくわかる。前統幕長の言葉から探る「日米同盟の抑止力」(上)
今回は詳しく述べないが、精度を高める北朝鮮の弾道ミサイルに対し、日本がミサイル防衛や国民の避難訓練に力を入れるようになったのも同じ文脈だ。日本を攻撃しても無駄だという状況を、日本自身の力で作ろうとしているわけだ。
それでも相手の攻撃を抑えきれなかったらどうするか。「日米同盟の抑止力」の第2ステージとして、米軍が自衛隊の支援に出動する。相手に対し、事態が悪化すれば国土への米軍による攻撃を招き、最後には核兵器が控えていることを意識させつつ、相手の攻撃を抑え込む。
ただ、自分の危険を顧みず他人を守るということは相当の決断であり、国家同士であればなおさらだ。米国が日本を守るハードルを下げ、「日米同盟の抑止力」を機能させるのに欠かせないものとして河野氏がインタビューで強調したのが、「同盟を双務性に近づける」ことだった。
「米国が核を使ってでも日本を守るようにするには、米国にとっての日本の価値を高めないといけない。米国との信頼関係を強固にするために、米国が日本を守る片務性が強い今の同盟を、双務性に近づけていかないといけない」
河野氏が言う「日米同盟の片務性・双務性」とは何か。