メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

news letter
RSS

ふるさと納税、もはや限界

「踏み絵」「パワハラ」泉佐野市が逆襲/矛盾が次々露呈、存廃判断の時

市川速水 朝日新聞編集委員

「踏み絵」「嫌がらせ」総務省を罵倒した泉佐野市

 「適正な手法で集めた適当な額」について、国は北海道根室市の「年間50億円」が基準になるとした。これを元に2018年11月から2019年3月までの各自治体の実態を審査したという。この期間は、国が豪華返礼品について苦情や警告を連発した時期と重なる。

 「あれほど言ったのに言うことを聞かなかったから」というペナルティーと受け止めるしかない。根室市を「模範生」として、他自治体に「見習え」と迫るものともいえる。

 さらに、4カ月に指定期間が短縮された43自治体は「基準に反する返礼品を提供したものの、寄付額が根室市ほどには及ばなかったから」とされた。単なるPR不足かもしれないし、返礼品そのものに魅力が不足していたからかもしれない。

 「違反したけど大した効果がなかった」ことが「イエローカード」の理由になった。

 東京都は、かねて税収を地方へ移転するふるさと納税方式に批判的で、届出をしなかったのは「受益と負担という地方税の原則からみて好ましくない」(小池百合子・都知事)という見識からだった。ただし、これまでふるさと納税の件数が少なく、財政的にも不安がない東京都だから言えた筋論ともいえる。

 元々、「返礼品は3割を限度として地場産品に限る」という基準に根拠が見当たらない。なぜ根室市が基準なのかも説得力に欠ける。良い自治体と悪い自治体の線引きは、こんなに簡単にできてしまうのだ。

 泉佐野市は「排除」を受けて5月17日、公式HPで膨大な「反論」を始めた。印字するとA4で38ページにもなる。

 「本市は新制度に適合した内容での参加申請を行っておりましたが、今回総務省が適用から除外するという判断を下したことに対して、大変驚き、困惑しています。昨年11月以降、本市を含めた4自治体以外にも総務省の技術的助言の基準を満たしていない自治体がいくつも存在していたにもかかわらず、4自治体だけが制度の対象外となったのには総務省の恣意的な判断があったのではないか。そもそも、法施行前の取り組みを踏まえるという行為は、『法の不遡及』という原則から逸脱しており、法治国家としてあってはならない権限の濫用ではないのか。疑問を禁じ得ません」

 そして、「常軌を逸した総務省のパワハラ」「まるで踏み絵」「嫌がらせ」と、荒い言葉で総務省を罵倒している。これほど政府を相手に公の場でけんかを売った自治体があっただろうか。

拡大「郵便局員による見守り訪問」を返礼品に加え、日本郵便近畿支社と協定書を結んだ泉佐野市の千代松大耕市長(左)=2018年3月
 泉佐野市はここ数年、全国トップの寄付額を集めてきた。2017年度は135億円、2018年度は497億円。ふるさと納税のアイデアが奏功したこともあって、財政の破綻寸前から復活し、プールのなかった学校にも整備することができた。泉佐野市への寄付金は今後、減っていくことは想像に難くない。

 富裕層にとっては、泉佐野市が適用除外になったからといって納税(正確には寄付)の価値がゼロになったわけではない。

 所得税率の高い人が寄付を確定申告すれば、税率分(課税所得が4000万円超なら最高税率の45%)が還付される。半額程度の返礼品を受け取り、それが魅力的であれば、それほどの損はない、という考え方もできる。

 逆に新制度で「3割までなら返礼品OK」と太鼓判が押されたことで、それ以下だった自治体は3割に引き上げなければ、競争に加われない可能性がでてきた。

全ジャンルパックなら本の記事が読み放題。


筆者

市川速水

市川速水(いちかわ・はやみ) 朝日新聞編集委員

1960年生まれ。一橋大学法学部卒。東京社会部、香港返還(1997年)時の香港特派員。ソウル支局長時代は北朝鮮の核疑惑をめぐる6者協議を取材。中国総局長(北京)時代には習近平国家主席(当時副主席)と会見。2016年9月から現職。著書に「皇室報道」、対談集「朝日vs.産経 ソウル発」(いずれも朝日新聞社)など。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

市川速水の記事

もっと見る