メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

RSS

「衆参同日選」と「緊急事態条項」は矛盾だ!

「危機対応できない」と主張をしつつ、実はなんの危機も実感していないのでは?

大野博人 朝日新聞編集委員

拡大自民党の「日本国憲法改正草案」とその解説集

これはたちの悪い冗談か

 こんなにたちの悪い冗談はめったにない。しかもいつまでたってもやめない。

 衆議院と参議院の選挙を同日にやる可能性があり、与党も野党もそれを視野に入れて態勢を整えつつあるという。なんでそうなるのか。

 消費増税がらみで、自民党の萩生田光一幹事長代行が衆院解散に触れたり、菅義偉官房長官が野党による内閣不信任決議案の提出が衆院を解散する「大義」になりうるとの認識を示したり。夏に参議院選挙を控えているために、同日選をにらんだ動きが加速しているらしい。

 けれども、与党政治家たちは自分たちで言いつのっていたことをもう忘れたのだろうか。憲法改正を主張するときに「緊急事態条項」の必要性を持ち出し、まさかのときに立法府の不在状態が生じないように、衆議院解散も制限できるようにするべきだと言ってきたではないか。

 今も自民党のホームページに掲げられている「憲法改正草案」の98条にはこうある。

内閣総理大臣は、我が国に対する外部からの武力攻撃、内乱等による社会秩序の混乱、地震等による大規模な自然災害その他の法律で定める緊急事態において、特に必要があると認めるときは、法律の定めるところにより、閣議にかけて、緊急事態の宣言を発することができる

 そして、その宣言の効果のひとつとして99条4項はこう規定している。

その宣言が効力を有する期間、衆議院は解散されないものとし、両議院の議員の任期及びその選挙期日の特例を設けることができる

 今の日本を取りまく環境は厳しい。

 北朝鮮は何をするかわからない。3.11のように巨大な地震などの災害にいつ何時襲われるかもしれない。首都が直下型地震に直撃されたら不測の事態もありうる。南海トラフ地震は、30年以内の発生確率が70~80%と予想されている……。

 そんなときが選挙の時期と重なって立法府が不在になることは絶対に避けなければならない。だから、衆議院の解散を制限し議員の任期延長などを可能にする条項を憲法に入れなければならない。

 繰り返し、そう強調していたではないか。

全ジャンルパックなら本の記事が読み放題。


筆者

大野博人

大野博人(おおの・ひろひと) 朝日新聞編集委員

1981年朝日新聞入社。ジャカルタ、パリ、ロンドンの特派員などを経て、2012年に論説主幹。現在は編集委員。

大野博人の記事

もっと見る