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「衆参同日選」と「緊急事態条項」は矛盾だ!

「危機対応できない」と主張をしつつ、実はなんの危機も実感していないのでは?

大野博人 元新聞記者

緊急事態を口にするなら同日選は言い出せない

 だったら、参議院議員が選挙で半分いなくなる時に、衆議院まで解散するなんてどういうこと? 

 そんなときに不測の事態が起きたらどうするつもり?

 日本の選挙制度で考えると、これ以上「立法の不在」の度合いが高くなる瞬間はない。

 憲法改正について、安倍晋三首相は今、自衛隊を明記する点にこだわっているようだ。しかし、いったん「立法府の不在」を憲法改正が必要であることの理由にし、今もその「草案」を掲げているのだから、日本を取りまく国際情勢や災害についての基本認識に変わりはないということだろう。

 であれば、その認識からいったいどんな理屈で同日選挙などという発想が出てくるのか。

 参議院議員は選挙中も身分を失うわけではないし改選は半数だから、立法府は不在にならないという説明が可能かもしれない。だが、だったら緊急事態条項による衆院の解散の制限は必要ないということになる。

 つまり、同日選を言い出すことと、緊急事態を憲法改正の理由にすることは両立しない。緊急事態を口にするならば同日選は言い出すことはできないはずだし、同日選を言い出すならば、憲法改正にからんで緊急事態は口にできないはずだ。

 実際のところは、眉間にしわ寄せて「危機に対応できない国家では困る」なんて主張をしながら、自分たちではなんの危機も実感していないのだろう。

拡大安倍首相の最側近である萩生田光一幹事長代行=2019年4月19日、東京・永田町の自民党本部

 同日選という観測には、否定的にコメントする政治家もいるけれど、今やるべきかどうか以前に、与党政治家の頭の中からは同日選という選択肢自体が消えていなければおかしい。

 直下型地震が首都を襲う恐れは常にある、福島第1原発で不測の事態が起きる場合に備えていなければならない、米朝関係が悪化に向けて気を抜いてはいけない……。

 そんな危機意識を持っているのであれば、同日選など恐ろしくてできないはずだ。

 つまり、この同日選騒ぎが露呈しているのは、「緊急事態」を言いつのる政治家たちが実は、日本の危機などまったく意に介していないという実態だと思う。

 解散の時期をずらして同日選にはしないとしても、意味のない解散に乗り出すのは「草案」の示す認識とは矛盾するだろう。

 また、菅官房長官は「内閣不信任決議案の提出」を解散の「大義」になると言うけれど、ふつう「大義」になるのは「内閣不信任案の可決」であって「提出」ではない。「提出」されただけで「草案」にあるような日本を取りまく深刻な危機状況の中であえて解散に踏み切る理屈にはなりえない。

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筆者

大野博人

大野博人(おおの・ひろひと) 元新聞記者

朝日新聞でパリ、ロンドンの特派員、論説主幹、編集委員などを務め、コラム「日曜に想う」を担当。2020年春に退社。長野県に移住し家事をもっぱらとする生活。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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