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女性が挑んだ「選挙戦改革」(下)

統一地方選の3候補を追って見えたもの

東野 真和 朝日新聞編集委員



明暗分かれた決算は 

 選挙結果は明暗が分かれた。

埼玉県議選 南5区(定数1)
当 藤井健志  自民現(43) 20103
次 山田千良子 立民新(33) 16387

千代田区議選(定数25)
落 山田千洋 維新の会新(57) 447
*最下位当選と75票差

三鷹市議選(定数28)
当 成田千尋 無所属新(34) 3731
*2位当選

選挙ポスターの掲示板の位置がわからず地図を見る=東京都千代田区拡大選挙ポスターの掲示板の位置がわからず地図を見る=東京都千代田区
 埼玉県議選で落選した山田千良子さんは出遅れが響いた。「選挙戦後半、急に声をかけてくれる人が増えた」と勢いがついただけに悔やまれる。会社に在職のまま立候補する道を探ったことも含め、出るかどうか迷い、本格的な選挙態勢に入るのが告示からわずか2カ月前だったわりには善戦した。

 千代田区議選で落選した山田千洋さんも、「準備不足」と反省する。キャリアウーマンらしく「スタッフィング(組織化)とマーケティングの失敗」を分析した。協力者を集められず、支持を得るターゲットを新住民に絞ったものの、途中で共鳴してくれる旧住民がいて運動が分散したという。地域の組織票は固かったが、選挙後に祭り関係の旧住民に「神田は義理人情の町。もっと早く言ってくれれば」と言われ残念がった。得票の9割以上は「どこのだれだか見当もつかない人たち」の票だった。政策ビラを見て、「力になる」とメールしてくれた人たちもいたが、いまだに会えていない。

 ただ2人とも「次は一緒にがんばろう」とあちこちから声をかけてくれる人がいて、再挑戦も選択肢に入れている。密着取材をしていて、選挙の戦い方を間違っていたから落選したわけではないと思う。「働き方改革」ならぬ「選挙の戦い方改革」に磨きをかければ、女性候補はもっと当選するし、それを見て「私も出よう」と思う人も増えるはずだ。

 3人に、選挙費用についても聞いてみた。

山田千良子さん(埼玉県議選)

【支出】316万円
ポスター・ビラなど作成・印刷費147万円*
ポスティング代 46万円
街宣車リース、装飾代 42万円*
運転手・同乗運動員日当 11万円*
選挙事務所の家賃や備品代 36万円
看板代 10万円
拡声機・マイクのレンタル代 9万円


【収入】283万円
党の公認料 150万円
党からの借入金(返済免除) 100万円
女性候補支援団体から助成金  20万円
個人・団体からの寄付     13万円
(*印は一部が公費でまかなわれる)

 政党から資金が出たことで、公費を足せばほぼ手出しなしで選挙できた。

 山田千洋さんはポスティングとネット広告への支出がほとんどで、100万円強の持ち出し。「後から思えば、ビラや広告のデザインなどは知人に頼めばもっと安くする方法はあった」と話す。

 成田千尋さんはポスティングも自分でしたため、ビラやパンフのデザイン・印刷費用など20万円以下の出費ですんだ。「一つの例として参考にしていただければ。別の場所で別の立場で立候補するときに違うやり方があると思うので」。

 1万票単位の獲得が必要な県議選は政党公認でなければ出費がかさむようだが、市区町村議選では、やり方によっては高いハードルではなさそうだ。

 ただ、職を失うことは、大きな痛手だ。

 埼玉県議選に落選した翌々日、山田千良子さんは、職業安定所に仕事探しと失業保険の申請に訪れた。窓口の順番を待つ間も、携帯電話には支援者から「よくがんばった」「4年後も挑戦してほしい」と励ましの電話がかかってくるが、正直、まずは収入を得る手段を考えねばならず、今後のことは白紙状態だ。

 対照的なのは、千代田区議選に落選した山田千洋さんだ。翌日から何事もなかったように職場に戻り、仕事を再開した。周囲から「組織もないのによくあれだけ票を取ったね」とねぎらわれた。細かく質問してくる同僚もいて、「自分もやってみようかな、と思ってくれてる人も出てくるのかもしれない」と思う。

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筆者

東野 真和

東野 真和(ひがしの・まさかず) 朝日新聞編集委員

1964年生まれ。社会部、政治部、編集センター、特別報道センターなどを経て、東日本大震災後に岩手県大槌町で3年間、熊本地震後に熊本県南阿蘇村で2年間、それぞれ民家に下宿。現在も震災復興・地方自治の編集委員として取材を続ける。著書に「駐在記者発 大槌町 震災からの365日」(岩波書店)、「理念なき復興」(明石書店)など。