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米軍基地が沖縄だけの問題でなくなった本当の理由

在日米軍統合運用の深化と航空機の飛行規制ができない日米地位協定で問題が全国に拡大

山本章子 琉球大学准教授

騒音データ比較の予想外の結果

 そこで、2018年4月から2019年3月にかけて岩国飛行場、普天間飛行場、嘉手納基地の周辺で測定された航空機騒音を、「うるささ指数」であるLden(エルデン)で比較してみよう。

 岩国市が測定した岩国飛行場周辺5カ所の平均値を計算すると、年間平均は53.5Lden。また、沖縄県環境調査データをもとに、普天間周辺の測定局12カ所、嘉手納周辺の測定局15カ所で測定された速報値の平均値を計算したところ、普天間の年間平均は52.5Lden、嘉手納と53.2Lden。意外なことに、どの基地も年間平均値はほぼ変わらない。

 しかも、これら3つの米軍基地は、Ldenの月別平均値とその推移もおおむね一致している。2018年6月12日に実現した米朝首脳会談の影響で、同年8~9月の米韓合同軍事演習が中止になった折には数値がぐっと下がり、10月29日から11月8日にかけて実施された日米共同統合演習の期間には上がった。

【グラフ1】米軍航空機騒音測定結果(Lden)

拡大【グラフ1】米軍航空機騒音測定結果(Lden)

深まる基地の統合運用

 この事実は、岩国・普天間・嘉手納の運用上の統合が進んでいることを意味する。米国はドナルド・トランプ政権になってから、北朝鮮の核・ミサイル開発や中国の海洋進出に対抗して、アジア太平洋地域での航空・海洋攻撃能力を強化してきた。そのなかで、空軍と海軍・海兵隊の統合作戦が重視されているのだ。

 したがって、米海軍佐世保基地(長崎県)も統合運用に不可欠な存在となる。佐世保基地に現在配備されている強襲揚陸艦「ワスプ」に代わり、2019年中に新たに配備予定の大型強襲揚陸艦「アメリカ」は、ワスプよりも航空機用の格納庫などが充実している。岩国飛行場所属のF35Bや、MV22「オスプレイ」輸送機を艦載し、在沖米軍との一体的な運用を行う計画だとされる。

 明海大学の小谷哲男准教授(安全保障論)によれば、現在の米軍の作戦上のキーワードは「マルチドメインバトル(多次元戦闘)」。陸海空軍および海兵隊の4軍が、作戦ごとに部隊を分散させ、自律性を保ちながら、敵への一斉攻撃を行うというものだ。

 米軍各軍が導入を進めるF35型ステルス戦闘機は、通信ネットワークで各部隊が相互に他の戦況を把握できるようになっている。岩国・佐世保・嘉手納・普天間に所属する各米軍部隊は、有事を想定した日々の訓練を通じて、F35などの最新装備を使いこなし、運用の統合性を高めることを目指しているのだ。

 在日米軍と自衛隊との一体運用も進められている。陸上自衛隊は2018年3月、相浦駐屯地(長崎市佐世保市)に、離島防衛を主任務とする「水陸機動団」を発足した。水陸機動団は同年10月、フィリピンで米海兵隊、米海軍第7艦隊とともに訓練を行うなど、米軍との共同訓練を積み重ねている。

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筆者

山本章子

山本章子(やまもと・あきこ) 琉球大学准教授

1979年北海道生まれ。一橋大学大学院社会学研究科博士課程修了。博士(社会学)。2020年4月から現職。著書に『米国と日米安保条約改定ー沖縄・基地・同盟』(吉田書店、2017年)、『米国アウトサイダー大統領ー世界を揺さぶる「異端」の政治家たち』(朝日選書、2017年)、『日米地位協定ー在日米軍と「同盟」の70年』(中公新書、2019年)など。

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