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イランや北朝鮮の核は本当に「悪」なのか?

「核軍拡」に向かう世界。日本も安全保障についてナイーブではいられない

高橋 浩祐 国際ジャーナリスト

核をめぐる北朝鮮の論理

拡大北朝鮮が5月9日に行った火力攻撃訓練を指導する金正恩朝鮮労働党委員長=労働新聞ホームページから
 核をめぐる北朝鮮の論理や立場は分かりやすい。「世界が非核化すれば核放棄をする」との姿勢を示しているからだ。

 例えば、同国の最高人民会議が2013年4月に採択した「自衛的核保有国の地位をさらに強固にすることについての法」では、「世界が非核化されるまでの間、朝鮮民主主義人民共和国に対する敵の侵略と攻撃を抑止および撃退し、侵略の本拠地に致命的な報復打撃を加える」と記されている。

 さらに、金正恩委員長は2018年4月21日開催の朝鮮労働党中央委員会の第7期第3回総会で、「核実験中止は、世界的な核軍縮のための重要な過程であり、わが共和国は、核実験の全面中止のための国際的な志向と努力に合流するものである」と述べている。

 つまり、「世界が非核化するまでの間」は北朝鮮は核兵器を手放さないし、「核実験中止」もあくまで「世界的な核軍縮のため」と位置付けている。

 日本をはじめ、周辺国にとっては、北朝鮮の核ミサイルは地域の平和と安定を揺るがす脅威そのものだ。しかし、北朝鮮は、東側と南側には「アメリカの核の傘」に守られた日本と韓国、北側には核保有国のロシア、西側には同じく核保有の中国に囲まれているので、自衛のために核兵器が必要とのスタンスだ。

 朝鮮半島は、歴史的に世界列強の「草刈り場」と化し、「クジラに囲まれたエビ」ともたとえられている。それだけに、北朝鮮が国家自衛のために欠かせない、「核の宝剣」(金委員長の言葉)をいとも簡単に手放すとは考えられない。

世界は「核軍拡」の流れ

 では、金正恩委員長が前提要件として挙げるように、世界は「非核化」や「核軍縮」の流れになっているか。現実は真逆だ。

 トランプ政権は2018年、英仏独中ロとともに締結した2015年のイラン核合意から一方的に離脱した。さらに、冷戦中の1987年にアメリカが旧ソ連と結んだ中距離核戦力(INF)全廃条約の破棄も一方的に宣言した。

 また、米議会予算局(CBO)が2019年1月に公表した報告書によると、アメリカ政府は核兵器の近代化と維持のための予算をぐっと増やし、今後10年間で4940億ドル(約54兆1000億円)を支出すると見込まれている。年平均では500億ドル弱となり、日本の毎年の防衛予算さえも上回るほどだ。

 アメリカの核軍拡だけが問題ではない。5月に入り、ニューヨークの国連本部で開かれていた核不拡散条約(NPT)の第3回準備委員会は、2020年の同条約の再検討会議の指針となる「勧告」を採択できないまま、閉幕した。そもそもNPT条約は第6条で、核保有国に対して核軍備競争の早期の停止や核軍縮を義務付けているにもかかわらず、現在はアメリカもロシアも中国も核戦力を増強中だ。

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筆者

高橋 浩祐

高橋 浩祐(たかはし・こうすけ) 国際ジャーナリスト

英国の軍事専門誌「ジェーンズ・ディフェンス・ウィークリー」東京特派員。1993年3月慶応大学経済学部卒、2003年12月米国コロンビア大学大学院でジャーナリズム、国際関係公共政策の修士号取得。ハフィントンポスト日本版編集長や日経CNBCコメンテーターを歴任。朝日新聞社、ブルームバーグ・ニューズ、 ウォール・ストリート・ジャーナル日本版、ロイター通信で記者や編集者を務める。

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