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[137]コルトレーンの「至上の愛」を舞う

金平茂紀 TBS報道局記者、キャスター、ディレクター

5月7日(火) 代替わり・改元騒ぎに辟易していてばかりではダメじゃん。このままではとにかく確実によくないのだ。テレビ報道が内向きに内向きになっていないか。午前中、『報道特集』の定例会議。会議を開く前からもう何かが決まっている感じがしないでもない。何のための会議なんだろうか。

 9月の札幌行きのための諸準備。昼、I、T。組織というものは際限なく腐敗することを知る。怒りと無力感。邦画をしばらく見ていないので、人から薦められていたものをみる。『月極オトコトモダチ』。何だかみずみずしい感覚が宿っているな。レンタル男友達とアラサーの女性WEB編集者の、結局は恋物語だ。何だか「業界」臭がしないわけではないが、音楽の使い方がいい。監督は美学校で映画をこころざした若い女性だった。上映終了後に軽く挨拶する。

5月8日(水) ストレスがずいぶんとたまって、プールへ行きがっつり泳ぐ。米中貿易摩擦でトランプが指先でツイッターを使って好き放題に呟くと経済指標が乱高下する。なぜこんな滅茶苦茶を皆許しているんだろう。16時から神田で打ち合わせ。出口をどこに見出すかだ。

 その後、日本評論社から出ている憲法改悪反対ブックレットの1万部突破祝賀記念会。T弁護士の主催。20人ほどの出席。盛会だった。なかなかお会いできない高名な法学者の方もおられた。にんまりしたことのひとつは、会場のレストランのシェフご夫妻(とても若い)が、僕の故郷・旭川から来た人だったこと。それぞれ東光と神居の出身だという。何だかそれだけで嬉しくなり飲み過ぎてしまった。何やってんだか。さらに会場で同席したS弁護士とESPAへ。天皇関連で以前から調べていた某所に明日行くことにする。

5月9日(木) 北陸新幹線で東京駅発午前10時24分、長野着午前11時44分。本当に近い。沖縄タイムス社からの本『新・ワジワジー通信』が出来上がって納本しますとの連絡。10連休の影響で納本が遅れた。日経がカルロス・ゴーン氏のキャロル夫人にSKYPEインタビューをしたようだ。出先なので見られないが。

 その後みっちりと時間をかけて取材。思った以上にとても収穫があった。そこで見たものは強烈に目に焼き付いている。戦争というものが末期にいかなる奇形的な形態をとり得るのか、想像力を大いに刺激された。夜、SBC(信越放送)の畏友Nさん、Mさん、Kさんと久しぶりに再会して歓談。どんどんお酒を飲んでしまう。美味しい! Mさんは今、「無言館」の番組を制作中だとのこと。Kさんも昔と変わっていない。そう、20年以上前、新入社員に毛が生えた当時の彼女に酒席でさんざん絡まれたことがあった。今ではいい思い出だ。それにしても僕は何やってんだか。Nさんのような硬派が生き残っている信越放送には未来がある。Nさんからメモ(筑紫さん関係)が送られてきた。松本サリン事件報道をめぐる思い出がつまっていた。

画学生らの遺作や遺品などが並ぶ館内 被写体所在地 上田市の無言館戦時中の画学生の作品などを展示している無言館=長野県上田市

テレビ制作現場の世界が、壊れてきている

5月10日(金) 早朝、宿泊したビジネスホテルが「売り」にしている露天風呂に入って酒を抜く。午前10時半には東京に戻ってきてしまった。本当に近いわ。

 東京に戻った理由は、レバノン・フランス映画『カペナウム』(邦題『存在のない子供たち』、ナディーン・ラバキー監督・脚本・出演)をみるためだ。これはどうしてもみておきたい映画だった。2時間あまりのその映画には強い衝撃を受けた。何年か前、イスラム国=IS関係の取材で、レバノンのパレスチナ人居住地区を取材に行った時の記憶がよみがえってきた。主演の少年の

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