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自衛官のセカンドキャリアを考える

米国の退役軍人省を参考に、退官した自衛官のサポートを強化すべきだ

細野豪志 衆議院議員

米国の退役軍人省

拡大Bumble Dee/shutterstock.com
 米国には、職員38万人、8兆円の予算規模を有する退役軍人省が存在する。退役軍人及びその家族の医療的ケア、給付・手当、援護(再就職を含む)などを業務とする。

 全米に143の病院、1241か所の診療所、300か所の退役軍人センター、56か所の地域オフィス、136か所の国立墓地を配置しているというから、そのスケールの大きさには驚かされる。全て税金で支払われる年金が用意されるなど、国のために命を張った軍人の一生をケアする体制が整っている。

 元自衛官の知人から聞いたところ、アメリカに訓練に行くと、制服を着ているだけで空港のゲートを優先的に通してもらえるそうだ。軍人に敬意を表する姿勢は、教育現場を含め、社会全体に浸透している。

 戦死者を多く抱え、世界でも最もリスクが高い軍隊である米軍は特別だという面はあろう。しかし、わが国の自衛隊も、テロ対策や災害派遣、海外派遣が増加するなど、以前と比較して格段にリスクは高まっている。

 また、平成の時代に発生した阪神淡路大震災や東日本大震災などの災害派遣を通じて、国民の自衛隊に対する評価は大きく高まった。私は、米国の例を参考に、退職自衛官のセカンドキャリアについて見直すべき時期が来ていると思う。

自衛隊の退職援護体制

 自衛隊にも退職後の援護体制があり、関係する自衛官は懸命に業務に励んでいる。自衛官は退官する40代後半になると将来について考えるための1ヶ月ほどの教育期間があり、退職時には自衛隊内にある援護センターから仕事の紹介を受ける。ただ、援護センターが仕事を斡旋すると天下りとされるため、直接的な斡旋は禁じられている。

 援護センターから情報を得て、直接、仕事を斡旋するのは一般社団法人である自衛隊援護協会だ。その人員は約80名。この人員で、年間数千人の退職自衛官の再就職の斡旋を行っているのだ。

 自衛官は、「事に臨んでは危険を顧みず、身をもつて責務の完遂に務め、もつて国民の負託にこたえることを誓います」との宣誓をして入隊する。国民のためにその職責を全うした自衛官を再び一般社会に送り出す仕組みとして、あまりに貧弱だと私は思う。

 もちろん、自衛官についても現役時代の仕事と直接的な利害関係を有する企業への天下りは制限されるべきだが、若くして再就職を強いられる自衛官の再就職を一般の公務員と同列に論じるのはおかしい。米国の退役軍人省を参考にして、自衛隊の援護センターの規模を拡大して、国が直接的に自衛官の再就職を援護する仕組みをつくるべきだと私は考えている。


筆者

細野豪志

細野豪志(ほその・ごうし) 衆議院議員

1971年(昭和46年)生まれ。2000年衆議院議員初当選(現在7期)静岡5区。総理補佐官、環境大臣、原発事故担当大臣を歴任。専門はエネルギー、環境、安保、宇宙、海洋。外国人労働者、子どもの貧困、児童虐待、障がい児、LGBTなどに取り組む。趣味は囲碁、落語。滋賀県出身

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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