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衆参同日選の流れはどうなる!

トランプ大統領の発言、不透明感を増す景気……。安倍首相の選択肢は限られている

田中秀征 元経企庁長官 福山大学客員教授

不透明感を増す景気の先行き

 政権にとって気掛かりなのは、このところ景気の先行きに不透明感が増していることだ。

 5月に入ってから政府は経済に関連する三つの重要な発表をしている。それによると、予想以上に景気の現況が思わしくないことがわかる。また、そうした状況に対する政権の戸惑いも透けて見えてくる。

 第一の発表は、5月13日に発表された3月の景気動向調査だ。基調判断がほぼ6年ぶりに「悪化」となった。

 中国経済頼みの日本経済の「回復シナリオ」が、“米中貿易戦争”による中国経済の減速によって「悪化」している。そして、この“米中貿易戦争”は容易には収束しない。もちろん、日本経済が自助努力によって事態を乗り切ろうとしても、限界がある。

 景気動向指数は既定の諸統計の数字から機械的にはじき出して、その時点の「景況」について判定を下すものだ。ある意味、政治や行政の裁量が働いていないだけに、そこで「悪化」と判定された意味は小さくない。

 今年1月、政府は日本経済が「戦後最長の景気拡大に達した可能性」として、その良好さを誇示したが、当時すでに失速が始まっていた可能性もある。

 第二の発表は、5月20日今年の1~3月期のGDP(国内総生産)の速報値だ。事前の予想ではマイナス成長が大方の見方だったが、年率換算でプラス2.1%となり、驚きをもって受け止められた。

 しかし、その内容を精査すると、喜んでばかりはいられない。個人消費や設備投資など民間需要は盛り上がっていないのだ。10月の消費税増税を前にした住宅の駆け込み需要、あるいは公共投資など政策によってうみ出される政策需要が大きく寄与している。これだと、とても米中貿易戦争の大波をしのぐ強さがあるとは思われない。

あらゆるものに忖度した「月例経済報告」の表現

拡大月例経済報告等に関する関係閣僚会議に臨む安倍晋三首相(右側中央)=2019年5月24日、首相官邸
 第三の発表は5月24日、景気に対する政府の公式見解を示す5月の「月例経済報告」である。筆者も1996年当時、この報告を担当する閣僚であった。

 ある意味、歴史のある報告ではあるが、それが今回ほど注目されたのも珍しい。前述した二つの発表を踏まえ、今月の景況について、政府がどう認識しているかが、明示されるからだ。

 はたして結果は、全体的に判断を下方修正はしているものの、肝心の景気認識の点では、「緩やかに回復している」という公式見解を据え置いている。

 何かを忖度(そんたく)してというよりも、あらゆるものを忖度して、こうした表現になったと、私は理解している。

 もしもここで、景気が悪化しているとか、後退しているとかと明言すれば、その報告自体が景気を悪化させる材料になりかねない。そうなると、消費税の増税実施が難しくなり、衆参同日選挙も一段と現実味を増すことになる。

 だから私は、もし月例経済報告が、景気の「悪化」、「後退」を盛り込んでいたら、増税のさらなる先送り、それを争点に掲げた同日選挙が避けられないと考えてきた。だが、「リーマンショック」級の経済危機には至らないとして、予定通り増税した場合、増税自体がその方向への引き金になったとしても不思議ではない。日本経済はそんな危うさを内包しているのではないか。

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筆者

田中秀征

田中秀征(たなか・しゅうせい) 元経企庁長官 福山大学客員教授

1940年生まれ。東京大学文学部、北海道大学法学部卒。83年衆院選で自民党から当選。93年6月、自民党を離党し新党さきがけを結成、代表代行に。細川護熙政権で首相特別補佐、橋本龍太郎内閣で経企庁長官などを歴任。著書に『平成史への証言 政治はなぜ劣化したのか』(朝日選書)https://publications.asahi.com/ecs/detail/?item_id=20286、『自民党本流と保守本流――保守二党ふたたび』(講談社)、『保守再生の好機』(ロッキング・オン)ほか多数。

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