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ドジョウ野田首相の挫折と安倍氏の執念の返り咲き

平成政治の興亡 私が見た権力者たち(18)

星浩 政治ジャーナリスト

拡大衆院本会議で首相指名を受け、一礼する民主党の野田佳彦代表=2010年8月30日

「泥臭くとも粘り強く、国民のために汗をかく」

 2011(平成23)年8月30日に発足した野田佳彦内閣は、民主党内の融和と野党の自民、公明両党との対話に動いた。野田首相自身も「私は鰻でも金魚でもない。ドジョウのようなもの。泥臭くとも粘り強く、国民のために汗をかく」と語り、庶民政治家をアピールした。

 鳩山由紀夫、菅直人両政権下でぎくしゃくした霞が関の官僚組織との関係改善も進めた。野田首相は財務相、財務副大臣を経験したこともあり、財務省の信頼が厚かった。当時の事務次官は勝栄二郎氏。茫洋とした雰囲気だが、芯は強く、省内の人望も厚かった。勝次官は、財政再建を重視する野田首相の下でなら消費税率の引き上げができると思い定めていた。

 民主党内では、党員資格が停止中の小沢一郎氏の影響力は依然として大きく、野田首相の足元を揺さぶっていた。その小沢氏にとって誤算となる判決が9月26日、東京地裁で出された。石川知裕衆院議員ら小沢事務所の元秘書3人が、政治資金規正法違反(虚偽記載)を問われていた裁判で、3人とも有罪となったのだ。判決は、東北地方の公共事業に小沢事務所が深く関与し、裏献金を受け取っていたことも指摘。小沢氏には痛手となった。


筆者

星浩

星浩(ほし・ひろし) 政治ジャーナリスト

1955年福島県生まれ。79年、東京大学卒、朝日新聞入社。85年から政治部。首相官邸、外務省、自民党などを担当。ワシントン特派員、政治部デスク、オピニオン編集長などを経て特別編集委員。 2004-06年、東京大学大学院特任教授。16年に朝日新聞を退社、TBS系「NEWS23」キャスターを務める。主な著書に『自民党と戦後』『テレビ政治』『官房長官 側近の政治学』など。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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