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小泉進次郎氏が語る令和時代の社会保障・前編

社会保障のベテラン・鴨下一郎さんとの対話から見えた「リバランス」の意義

小泉進次郎 自民党衆院議員

キーサードは「リバランス」

――「リバランス」が、ビジョンのキーワードのようですね。

鴨下 これまでは、負担を増やす、給付を減らすという、国民の皆さまの権利や義務をある意味縛っていく方向の政策を法律に書き込むのが、社会保障の施策でした。負担する人と、負担しなくても受益を得られる人とが生まれますから、合意形成がひじょうに難しい。現役世代の人たちだって、いずれは支えられる側に回ります。しかし、今回のビジョンは、これまでの発想とは違う。自発的に社会保障を支えてくださる方、支えてもらう側の人もお互いに理解したうえで、社会保障制度を持続可能なものにしていく。これが基本の理念に貫かれています。

――リバランスは「第3の道」と書かれています。給付削減という第1の道、負担の拡大という第2の道より、この先は優先していく発想ですか。

拡大鴨下一郎さん(手前は小泉進次郎さん)
鴨下 「負担を上げさせてください」という話が簡単にできればいいのでしょうが、消費税を上げるとなれば、経済が腰折れしないか、消費マインドは冷え込まないかも考えなければならない。必ずしも取り得る選択肢になりません。給付を制限すれば、年金生活の方々は直接打撃を受けます。いまの民主主義はリアルタイム。問題意識をSNSで共有する時代ですから、画一的に進める手法そのものがオールドファッションですよ。国民みなが情報を共有して、自分たちの価値観で社会保障を選び、トータルで全体の適正化につなげていく。

小泉 ビジョンへの批判として受ける典型が、「第1の道、第2の道から逃げるな」です。しかし、まったく正反対で、「第1、第2の道だけに逃げるな」と言いたい。

 経済社会の構造自体が変わっているのだから、経済社会全体の構造改革に挑まないと、いままでのかたちのまま、給付の削減と負担の拡大を進めても、明るい未来は描けない。鴨下さんは、民主主義のなかで、社会保障改革が極めて高度な運びを強いられる政治の難しさの話をされましたが、なぜ、いまリバランスかといえば、ヨーロッパやアメリカのように国民を分断させないためですよ。分断させない政治が、これから大事になります。

ライフスタイルに応じて選択できる制度を示す

――でも、「支える側」と「支えられる側」を強調しすぎれば、かえって分断を生みかねません。

鴨下 現役世代のなかにも、障害を持っている方、残念ながら働けない方は社会が支えなければなりません。一方で、元気で、それなりに経済力のある高齢者は、支え手側にまわっていただく。画一的に、65歳過ぎたら年金世代、その下は現役世代といったように、二つに分けることがナンセンスです。支えられる側にいた障害のある方にも働く環境をつくることは必要で、タックスペイヤー(納税者)になられるかもしれない。

 同じように、いわゆる年金世代でも支え手側に回って、年金保険料を払う人が増えれば、全体がまわり始めます。弾力的に、自分のライフスタイルに応じて選択できる制度を示すのが政治の仕事です。ビジョンの行間には、決めるのは国民ひとりひとり、こういうことが書かれています。

拡大小泉進次郎さん
小泉 こう言うと叩かれるかもしれませんが、いつの時代も不安がゼロになることはない、と思います。リスクをゼロにする社会もできません。だけど、変化する時代のなかで、国民一人ひとりが生きたいと思った選択が可能となる環境をつくることは、政治にしかできない。人生100年も生きられるようになったことはすばらしいことですから、後は長生きをリスクにしないようにする。

――ビジョンには、小泉さん世代の議員が、2016年にまとめた「レールからの解放」「人生100年時代の社会保障へ」から主張してきた人生100年型年金などが盛り込まれていますね。

小泉 党の了承をとり、3年前とは違い、若手だけでなく全世代の政策になりました。昨年は、「勤労者皆社会保険」の考え方が、政府の骨太の方針にも入りました。

――知名度のある小泉さんの発信力頼み、ですか。

鴨下 属人的ですが、発信力のある人が熱心に取り組むことは欠かせません。だけど、それだけではできない。多少経験のある人間、老年、壮年、青年の老壮青それぞれの政治家の考え方をそろえ、賛同していくことが重要です。

――しかし、自民党の中で、考え方は本当にそろっているのでしょうか。

鴨下 そろっています。少なくとも、社会保障にかかわってきた人たちの中では。まあ、いろいろな古典的な保守的なお考えの人たちも、いますけれど。

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筆者

小泉進次郎

小泉進次郎(こいずみ・しんじろう) 自民党衆院議員

1981年生まれ。2009年、衆議院議員に初当選。復興政務官、党農林部会長などを歴任。超党派の議員で国会改革をめざす「『平成のうちに』衆議院改革実現会議」では、ぺーパレス化など国会改革の必要性を訴えてきた。当選4回(神奈川11区)。父は小泉純一郎元首相。