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[139]土俵にトランプ大統領が立った日

金平茂紀 TBS報道局記者、キャスター、ディレクター

5月21日(火) 朝から強い風雨。アメリカとの電話のやりとりを何度か。午前「報道特集」の定例会議。空虚感。外は非常に強い風雨。こころの中も風雨が続く。昼にT。その後、雑用オンパレード。毎日新聞のコラム原稿。トランプ訪日で予想されるテレビショーのフィーバーぶりについての警鐘を書く。

 今週の特集は防災マニュアルということで、あしたの早朝に広島に向かうことになる。NとCSの「ニュースの視点」について打ち合わせ。夕刻からかつての勉強会仲間、K、Nと会食。思ったことを自由に話し合える数少ない仲間だ。渋さ知らズの沖縄関連イベント。何だかパワフルになってきているようだ。

5月22日(水) 早朝、朝日新聞に目を通していたら、高橋純子さんの政治コラムが目に入った。文章がうまい。本質を皮肉をこめてズバリと刺す。天皇に値札をつけるなんて、本当に今の政権のゲス根性が透けて見える。下品なのだ。アメリカとの件で考えを尽くす。

土石流に襲われた大原ハイツ。巨岩を含む土石流が山側に近い住宅を倒壊させた=2018年7月9日、広島県熊野町西日本豪雨災害で、土石流に襲われた広島県熊野町の大原ハイツ=2018年7月9日
 朝8時15分発の便で広島へ。西日本豪雨で甚大な被害を受けた熊野町へと向かう。Tディレクターらと合流。広島は快晴。ただ、いくらか風があって湿度が低いのでしのぎやすい。空港から50分ほどの熊野町に直行。去年の西日本豪雨で大規模土砂崩れによって12人の犠牲者を出した同町の団地「大原ハイツ」に向かう。10カ月前の傷跡が生々しく残っている。というか、まだ復旧・復興のさなかにある。Tディレクターと相談しながら取材を粛々と進める。あまりの被害の甚大さの経験を無にしないために、大原ハイツの住民は独自の防災マニュアルや避難マップを作成していた。中心になって活動しているのは、60代のハイツのおっさんたちだ。暑い日差しの下で、こちらの取材に辛抱強くお付き合いいただいた。じりじり日焼けするのがわかる。

 夜ギリギリまで取材を続け、広島空港に急行して最終便で羽田に戻る。空港で、東京のテレビが、大物芸能人の大麻事件で大騒ぎになっていたことを知る。僕はJポップとか全くと言っていいほど興味がないので、どういう人がどんな目にあっているのかも含めて、正直、遠い世界の出来事だ。けれどもピエール瀧の時のように、メディア、特にテレビは大騒ぎしているのだろう。そしてそれに疑問を呈する言葉を発する人はほとんどいないのだろう。飛行機はガラガラだった。機内でぐっすり眠ってしまった。

大人が、若者や子どもの未来を奪っていった

5月23日(木) 朝、横浜市内の某所にて大事な取材のため赴くが、いかなる事情か空振りに終わった。一体何があったのか。まいった。それまでに非常に神経を集中していたので疲れた。時間がぽっかりと空いてしまったので、見たいと思っていた東京都写真美術館の宮本隆司写真展「いまだ見えざるところ」とユージン・スミスらの「場所をめぐる4つの物語」をみる。外は快晴で、まだ湿気がきつくないので気持ちがいい。

「面縄ピンホール2013」(2013年、東京都写真美術館蔵)が展示された会場宮本隆司の作品「面縄ピンホール2013」(2013年、東京都写真美術館蔵)が展示された会場=東京都写真美術館

 シリアからドイツに脱出したタラル・デルキ監督のドキュメンタリー作品『テロリストの息子に生まれて』(原題Of Fathers and Sons)をみる。シリア国内で反政府戦闘を続けているヌスラ戦線の戦士家族の「狂気」のなかの濃密な親子関係。わが子をジハード(聖戦)へと駆り立てる父親。学校よりもジハードを選ぶ子どもたち。ジハード戦士になるための軍事訓練を受けて「洗脳」されていく子どもたち。どこかに既視感がある。デジャビュ。そうだ。神風特攻隊だって、年若い兵士たちが、このような自爆攻撃に駆り立てられていったのだ。はっきりとこう言わねばならない。大人たちが、若者たち、子どもたちの未来を奪っていったのだ、と。

 けさの朝日新聞は芸能タレントの大麻事件を写真付きだがベタ記事の扱いにしていて、なるほどと思ったが、さらに

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