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「イスラム国がモザンビークを攻撃」の衝撃(上)

天然ガス輸入で日本も関係大。「遠いアフリカの国」の出来事で片付けられない

舩田クラーセンさやか 国際関係学博士、明治学院大学国際平和研究所研究員

ISIS発表に慌てる世界、闇に包まれる真の正体

拡大筆者の著書「The Origins of War in Mozambique」
 米国のSITEインテリジェンスによると、ISISのニュース組織は次のように喧伝しているという。

 「カリフの兵士は、十字軍であるモザンビーク軍による攻撃を撃退した…様々な武器で応戦し、彼らを殺害し負傷させた。ムジャヒディーンは武器、弾薬、ロケット弾を入手し破壊した」

 このニュースは、世界を駆け巡り、ガーディアンやBBC、AFP通信など国際的な新聞やメデイアが一斉に報じたが、存在しない村の名称などが記されており、中東での苦境を受けアフリカでの勢力拡大を誇示したいISISによる偽の発表と捉える向きが優勢である。

 その一方で、この地域の歴史や社会変動に詳しい識者の間では、ISISとまったく繋がりがないとまでも言いきれず、今後ISISとの連携が強まっていく可能性が高いとの見方も出ている。

 いずれにせよ、モザンビーク北端で攻撃を繰り返すこの武装集団は一体誰なのだろうか。

 最初の襲撃から18ヶ月が経過するというのに、先に述べたとおり、グループの名称も、リーダーや参加者の属性や出身地も一切明らかになっていない。モザンビーク政府関係者は、「盗賊」「テロリスト」「ジハーディスト」「イスラム過激派」などと呼び、これらの攻撃に社会的な基盤がないことを強調するとともに、ウガンダやソマリア、タンザニア、南アフリカなどからの「外国人による煽動」を主張してきた。

 実際、昨年8月から10月にかけて、モザンビーク政府は200名の「容疑者」とともに、南アフリカ人の起業家アンドレ・ハネコンを「武装集団のスポンサー、兵站責任者、コーディネイター」と呼んで拘束・逮捕している。昨年12月24日の訴状には、ハネコン氏らが「この地域を不安定化させ、天然ガス開発を妨害する」ことによって、最終的には「タンザニア南部からモザンビーク北部にまたがる独立国家を形成しようとしている」と記述されていた。

 しかし、このようなモザンビーク政府側の主張に対して、ハネコン氏の家族は繰り返し異議を唱えてきた。そして、南アフリカのメディアがこの件を取り上げ出した同じ月(今年1月)、投獄されていたハネコン氏の死亡が発表された。同氏の家族は、モザンビーク政府の関係者が、アナダルコ社の油田前にハネコン氏が所有する土地(海岸部)の利用権を取り上げるために、罪をでっち上げたこと、そして同氏が暗殺された可能性を主張している。

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筆者

舩田クラーセンさやか

舩田クラーセンさやか(ふなだクラーセンさやか) 国際関係学博士、明治学院大学国際平和研究所研究員

京都生まれ。国際関係学博士(津田塾大学)。1994年にモザンビークにて平和維持活動(UNMOZ)に参加し、パレスチナとボスニア・ヘルツェゴビナなどで政府派遣要員として紛争後の民主選挙の監視に関わった。その後、研究活動を進め、2004年から2015年まで、東京外国語大学にて「戦争と平和学」「アフリカ研究」「国際開発・協力」などの教育に携わる。その後、研究の軸足を「食と農」に移すとともに日本内外で市民社会の活動にも積極的に関わっている。著書に「モザンビーク解放闘争史〜「統一」と「分裂」の起源を求めて」(御茶の水書房)、The Origins of War in Mozambique (African Minds)、共著に「解放と暴力〜アフリカにおける植民地支配と現在」(東京大学出版会)、The Japanese in Latin America(Illinois University Press)、編著に「アフリカ学入門」(明石書店)、訳書に「国境を越える農民運動〜草の根が変えるダイナミズム」(明石書店)。 ブログ:https://afriqclass.exblog.jp/ ツイッター:https://twitter.com/sayakafc

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