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参院選に影響?「老後2千万円不足」問題の波紋

有権者の「年金」に寄せる関心はこれまでとはケタ違いに

田中秀征 元経企庁長官 福山大学客員教授

政府は警告のつもりでも

 「年金だけでは老後の資金を賄えず、95歳まで生きるには夫婦で2千万円の蓄えが必要」
 「少子高齢化で年金の給付水準の調整が予想され、不足額はさらに拡大する」

 なにも、野党や国民がそう言っているのではない。このことに全責任がある政府(金融庁)の報告書に、そう明記されているのである。

 政府は警告を発したつもりなのだろう。しかし、国民は政府のこうした態度に、どこか他人事のような印象を持つ。そして、「こうなった責任は政府にある」と受け止める。少子化も高齢化も、何十年も前から予想されていた。経済が衰弱したのは、政府の経済運営が間違っていたことも大きな原因だと考えるのは、自然である。

 それゆえ今回、世論が「年金」に寄せる関心は、これまでとはケタが違うのではないか。2007年の参院選前、第1次安倍政権でおきた「年金記録漏れ問題」とも異質である。なぜなら、一部の人たちではなく、ほとんどすべての人に、深刻な問題を提起したからだ。

財務相の受け取り拒否で宙に浮いた報告書

拡大閣議後記者会見で金融庁の報告書を受け取らないわけを説明する麻生太郎財務相兼金融担当相=2019年6月11日、東京・霞が関の財務省
 6月11日、麻生太郎財務相はその報告書を受け取らないと言い出した。金融庁の審議会が作成した報告書は、宙に浮いてしまったのだ。そこに書かれた内容は、決してとっぴなものではなく、「やっぱりそうか」という感じのことだ。ただ、どう考えても、これまで政府が広報してきた「100年安心」とは矛盾する。

 問題はなぜ、こうした事態を招いたのか。政府の対応のどこが間違っていたのかという点だ。

 報告書を将来への警告として、参院選を通じて議論を深めることは有益だ。その場合、今年に予定されている。公的年金の給付水準の見通しを示す財政検証も、必ず参院選前に公表する必要がある。財政検証の公表は5年に一度と義務づけられ、前回が2014年6月3日だから、もう公表されてもいい時期だ。これをもし、選挙後に先送りするというのなら、明らかな逃げである。


筆者

田中秀征

田中秀征(たなか・しゅうせい) 元経企庁長官 福山大学客員教授

1940年生まれ。東京大学文学部、北海道大学法学部卒。83年衆院選で自民党から当選。93年6月、自民党を離党し新党さきがけを結成、代表代行に。細川護熙政権で首相特別補佐、橋本龍太郎内閣で経企庁長官などを歴任。著書に『平成史への証言 政治はなぜ劣化したのか』(朝日選書)https://publications.asahi.com/ecs/detail/?item_id=20286、『自民党本流と保守本流――保守二党ふたたび』(講談社)、『保守再生の好機』(ロッキング・オン)ほか多数。

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