メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

news letter
RSS

核不拡散条約(NPT)は閣僚主導で推進を

発効50年。来春のレビュー会議の成功は事務レベルではなしえない

登 誠一郎 元内閣外政審議室長

拡大北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長が指導した2019年5月4日の軍事訓練=労働新聞のホームページから

1.NPTの現状

 日本は唯一の被爆国という事情もあり、国論が大きく分かれることもなく1970年にこの条約に署名し、76年に批准した。

 1970年のNPT発効時点ではいくつかの国が核開発を推進または研究中であったが、90年代に入ってから国際社会による説得やそれぞれの国内事情により、南アフリカ、アルゼンチン、ブラジルの3国が核兵器開発を断念してNPTに加入した。これはNPTの存在価値が高く評価された実績である。

 他方、イスラエルは以前より核兵器を保有していると推定されており、さらに90年代の後半にはインドとパキスタンが次々と核実験を実施して事実上の核保有国となり、この3か国はNPT非加盟の態度を貫いている。また北朝鮮は2003年にNPTからの脱退を宣言して、事実上NPT体制から離脱している。

 現在NPTの加盟国は191カ国に及び、この条約の根本は、①核兵器の保有を米、露、中、英、仏の5か国(核兵器国)に限定してその他の国・地域への拡散を禁止すること、及びこれ並行して、②核兵器国は核軍縮を推進する義務を負うこと、さらに③非核兵器国における原子力の平和利用を推進することという三つの柱からな成り立つものであるが、条約発効から50年にならんとする今日、①と②の柱が大きな壁に直面している。

2.核軍縮の停滞と非核兵器国の焦燥感

(1)INFは今夏消滅の見込み

 確かに世界に存在する核兵器の数量は冷戦時代の1980年代半ばをピークに減少している。

 冷戦末期の米ソ間のINF(中距離核戦略)全廃条約及びその後のSTART(戦略兵器削減条約)などにより米国とロシアが有する核弾頭は4分の1程度に減少した。しかし、核兵器の質(威力)の面では核戦力の近代化が進んでいる。さらに中国の保有する核弾頭数は増大を続けている。

 このような状況の中で、トランプ政権が本年2月にINFからの離脱をロシアに通告し、ロシアもこれに呼応しているので、INFは今年の8月に消滅する見込みである。なお中国は一貫してINFの考え方には否定的で中距離ミサイルの増産を行っており、現在は400基以上を保有するとみられている。

(2)核兵器禁止条約

 非核兵器国側から見ると、このような現状はNPT第6条に規定された核兵器国による全面完全軍縮に向けた交渉の実施とはかけ離れたものと認識され、核軍縮を促す手段として、2017年7月に国連総会において核兵器禁止条約を採択した。

 この条約は50か国が批准すると発効するが、この条約が核兵器国の意見を全く無視して採択されたことで反発が強まっており、発効後も核軍縮の現実的な推進にどの程度具体的な効果を有するか大きな疑問がある。先月のNPT運用検討会議準備委会合においても、核軍縮の現状評価についての双方の対立は収まらなかった。

 核兵器禁止条約は来年のNPT運用検討会議の前後には正式に発効することも予想される中、運用検討会議においては核兵器国側の核軍縮についての姿勢が問われることになる。

全ジャンルパックなら本の記事が読み放題。


筆者

登 誠一郎

登 誠一郎(のぼる・せいいちろう) 元内閣外政審議室長

兵庫県出身。東京大学法学部卒業後、外務省入省(1965)、駐米公使(1990)、ロサンジェルス総領事(1994)、外務省中近東アフリカ局長(1996)、内閣外政審議室長(1998)、ジュネーブ軍縮大使(2000)、OECD大使(2002)を歴任後、2005年に退官。以後、インバウンド分野にて活動。日本政府観光局理事を経て、現在、日本コングレス・コンベンション・ビューロー副会長、安保政策研究会理事。外交問題および観光分野に関して、朝日新聞「私の視点」、毎日新聞「発言」その他複数のメディアに掲載された論評多数。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

登 誠一郎の記事

もっと見る