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核不拡散条約(NPT)は閣僚主導で推進を

発効50年。来春のレビュー会議の成功は事務レベルではなしえない

登 誠一郎 元内閣外政審議室長

拡大ホワイトハウスで署名した文書を記者団に見せるトランプ米大統領(左)とイスラエルのネタニヤフ首相=2019年3月25日、ワシントン

3.中東非大量破壊兵器地帯をめぐる状況

(1)イスラエルの核武装

 NPTの直接関係者以外には余り知られていないことであるが、2000年以降に開催された4回の運用検討会議のうち2005年と2015年の2回の会議が決議の採択に失敗した主要因は、イスラエルの核武装に起因する中東非大量破壊兵器(WMD)地帯に関する条約締結のための国際会議開催問題であった。

 この国際会議については、2010年のNPT運用検討会議において、2012年までに開催されることが合意され、それがこの年の運用検討会議の成功に大きく貢献したが、結局この会議は2015年に至っても開催に至らなかった。

 そのため2015年の運用検討会議においては、この問題の対応に多くの時間と労力がさかれたが、核軍縮など他のほとんどの事項について実質的合意ができたにもかかわらず、中東非WMD地帯に関する国際会議について最後まで合意ができなかったために、決議全体が採択されなかった。

 しかも合意ができなかった主な問題点は、会議開催の時期についての明示をするか否かとか、会議における意思決定方法を全会一致とするか否かといういわば手続き的事項であったと伝えられ、運用検討会議の在り方に疑問を持たせる結果ともなった。

(2)米国とアラブ諸国の応酬

 中東非WMD地帯問題は、本来はNPT体制の推進のための中核的課題ではないが、アラブ諸国はイスラエルの核兵器に対抗するために、一貫してこの問題の推進に固執し、結果として運用検討会議の成功を妨げてきた。

 このような状況の中で昨年4月の第2回NPT準備委員会において、米国は「中東非WMD地帯問題を前進させるためには、NPTの運用検討会議のプロセスは適切ではない」との趣旨の作業文書を提出した。

 これをめぐって米国とアラブ諸国との間で激しい応酬が行われたが、アラブ側は米国の考えを逆手にとって、昨年10月の国連総会第1委員会において、中東非WMD地帯に関する会議を国連の枠内で開催するよう事務総長に委託する決定案を提出した。

 この決定案に対して、米とイスラエルは反対、日本や西欧諸国は棄権したが、アラブ諸国のほかロシアや一部非同盟諸国の賛成を得て採択された。

(3)米国の不参加

 このような形で中東非WMD地帯問題は、一応NPTの運用検討プロセスから国連主催の会議に移されたので、先月のNPT準備会議の場ではこの点についての議論が紛糾することもなく、勧告案においても国連主催会議に言及した一般的な表現に落ち着いた。

 しかしながら米国は本件会議には参加しない旨を表明しており、会議の開催自体も、また開催された場合にもその成果には大きな疑問が付されることになった。

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筆者

登 誠一郎

登 誠一郎(のぼる・せいいちろう) 元内閣外政審議室長

兵庫県出身。東京大学法学部卒業後、外務省入省(1965)、駐米公使(1990)、ロサンジェルス総領事(1994)、外務省中近東アフリカ局長(1996)、内閣外政審議室長(1998)、ジュネーブ軍縮大使(2000)、OECD大使(2002)を歴任後、2005年に退官。以後、インバウンド分野にて活動。日本政府観光局理事を経て、現在、日本コングレス・コンベンション・ビューロー副会長、安保政策研究会理事。外交問題および観光分野に関して、朝日新聞「私の視点」、毎日新聞「発言」その他複数のメディアに掲載された論評多数。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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