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核不拡散条約(NPT)は閣僚主導で推進を

発効50年。来春のレビュー会議の成功は事務レベルではなしえない

登 誠一郎 社団法人 安保政策研究会理事、元内閣外政審議室長

拡大核不拡散条約(NPT)再検討会議の準備委員会で演説する河野太郎外相=2018年4月24日、スイス・ジュネーブの国連欧州本部

4.来年のNPT運用検討会議の成功のために

(1)同じフォーマットでは成果見えず

 冒頭にも述べた通り、NPTは50年に及ぶ歴史の中で核保有国を安保理の常任理事国でもある5つの核兵器国に限定できず、インド、パキスタン及びイスラエルが事実上の核保有国となった。さらに北朝鮮も現在米国と首脳同士の直接交渉を行っているが、非核化の完全実施には極めて消極的である。

 他方、NPTがいくつかの潜在的核能力保有国の核開発を断念させてNPT加盟国とすることに成功したことは高く評価されるが、核兵器国側の核軍縮が進展しなければ、非核兵器国側の反発は一層高まり、現在のNPT体制がこのまま永続的に維持される保証はない。

 また1995年のNPT無期限延長とセットで合意された中東非大量破壊兵器地帯構想が全く進展を見せず、年内に開催が想定されているこの問題に関する国連主催会議の成果も決して明るい見通しが立たない。

 このような状態のまま、従来と同じフォーマットで来年4月末から4週間にわたってNPT運用検討会議が開催されても、その成功はおぼつかないと判断せざるを得ない。

(2)事務レベルでは政治判断は困難

 2000年以降の4回の運用検討会議を通じていえることは、会議の議長はじめ各国の代表はほとんど事務レベルであり、時間に追われた最終段階で必要な現場の政治的判断が困難であったことである。

 この中で2000年と2010年は合意文書の表現を工夫してかろうじて採択にこぎつけたが、来たる2020年の会議においては、第一に核兵器国と非核兵器国の対立が2017年の核兵器禁止条約の署名を機に一層激化していること、及び第二に中東非大量破壊兵器地帯条約の交渉が全く進展していないことなどにより、2015年の失敗の二の舞となることが深く懸念される。

(3)閣僚レベルの交渉もない限界

 今日の世界の主要な国際会議は、政治、経済、環境などいかなる分野においても、政治レベルの討議と折衝を経て合意が図られるのが現実である。

 しかるに核不拡散・核軍縮という安全保障のかなめであって赤裸々な国益がぶつかるNPTにかかる最重要会議の運用検討会議が、すべて事務レベルで事を運ぶという従来のやり方は完全に限界を露呈していると言わざるを得ない。G7にしてもAPECにしても、またアジア・欧州会議(ASEM)にしても出席者は首脳レベルである。

 これに比して閣僚レベルの交渉でさえ行われていないNPTの運用検討会議は、いわば世界主要国際会議フィールドで2周遅れとさえ言える。このことは一昨年に広島で開催された国連軍縮会議(官民双方の参加)において、個人の資格で参加した私が指摘したことであり、その後、国連の軍縮担当次長である中満氏もこの考えに同調してリーダーシップを発揮し、舞台裏で種々検討が加えられているようである。

 この点は、今回の準備会議でも取り上げられて勧告案の中に、「2020年の運用検討会議においては、各国がハイレベルの代表を派遣するよう慫慂する」とのパラが挿入された。これはNPT運用検討会議の歴史上初めてのことであり、画期的といえる。

(4)会議終盤に閣僚折衝を

 問題は、どのタイミングで、いかなる形で政治レベルの関与を得るかである。

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筆者

登 誠一郎

登 誠一郎(のぼる・せいいちろう) 社団法人 安保政策研究会理事、元内閣外政審議室長

兵庫県出身。東京大学法学部卒業後、外務省入省(1965)、駐米公使(1990)、ロサンジェルス総領事(1994)、外務省中近東アフリカ局長(1996)、内閣外政審議室長(1998)、ジュネーブ軍縮大使(2000)、OECD大使(2002)を歴任後、2005年に退官。以後、インバウンド分野にて活動。日本政府観光局理事を経て、現在、日本コングレス・コンベンション・ビューロー副会長、安保政策研究会理事。外交問題および観光分野に関して、朝日新聞「私の視点」、毎日新聞「発言」その他複数のメディアに掲載された論評多数。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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