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香港市民はなぜ、大規模デモをするのか?(上)

雨傘運動から5年。香港の市民が再び立ち上がったやむにやまれぬ理由

五野井郁夫 高千穂大学経営学部教授(政治学・国際関係論)

拡大金鐘前を埋め尽くすデモ参加者たち=2019年6月16日(撮影:五野井郁夫)

香港の市民が再び立ち上がった

 民主化運動として知られる雨傘運動から5年。香港の市民が再び立ち上がったのは、天安門事件から30年にあたる節目の年、同じく紫陽花の花咲く季節だった。

 200万人という香港の歴史上で最も多くの参加者数を記録した6月16日のデモから2日後の6月18日夜、香港政府のトップである林鄭月娥(キャリー・ラム)行政長官が臨時の記者会見をした。香港から中国本土への刑事事件の容疑者引き渡しを可能にする「逃亡犯条例」改正案を無制限延期とし、事実上の廃案する考えを示すとともに、大規模なデモが繰り返され警官隊と若者が衝突するなど社会の混乱を招いたことについて、「市民に心からおわびする」と謝罪したのだ(「逃亡犯条例、事実上廃案に 香港長官、撤回とは明言せず」朝日新聞DIGITAL)。条例改正案の撤回・廃案を求める香港の市民が、中国共産党の中央政府に勝利したのである。

 先週、香港の友人研究者たちから16日に大規模な集会をやるので来ないかという誘いを受け、筆者は15日に現地入りし、期せずしてこの勝利を決定的なものとした200万人デモという歴史的瞬間の立会人となった。

 政治学でいうところの「包括的抑圧体制」である中国共産党政府に対する今回の香港市民の勝利には、われわれが民主主義を守るための手がかりが数多くある。では、なぜ香港市民はデモをするのか、そして今回どのようにして中国政府に勝利できたのだろうか。今回の一連の動きを、現地でのフィールドスタディやインタビュー取材も交え、上下2回でつまびらかにしていきたい。


筆者

五野井郁夫

五野井郁夫(ごのい・いくお) 高千穂大学経営学部教授(政治学・国際関係論)

高千穂大学経営学部教授/国際基督教大学社会科学研究所研究員。1979年、東京都生まれ。上智大学法学部卒業、東京大学大学院総合文化研究科国際社会科学専攻博士課程修了(学術博士)。日本学術振興会特別研究員、立教大学法学部助教を経て現職。専門は政治学・国際関係論。おもに民主主義論を研究。著書に『「デモ」とは何か――変貌する直接民主主義』(NHKブックス)、共編著に『リベラル再起動のために』(毎日新聞出版)、共訳書にウィリアム・コノリー『プルーラリズム』(岩波書店)など。

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