F35墜落事故は本当にパイロットが原因なのか
105機の追加購入に1兆2000億円。トランプとロッキードへの遠慮が見え隠れ
佐藤章 ジャーナリスト 元朝日新聞記者 五月書房新社編集委員会委員長

三沢沖に墜落したのと同型の航空自衛隊F35A=航空自衛隊HPから
墜落したF35、捜索は2か月で打ち切り
安倍首相は憲法9条を変えたくてうずうずしている。うずうずしているどころかその願望を堂々と公言さえしている。このこと自体、憲法99条の憲法尊重擁護義務違反に当たる可能性が大きいが、安倍首相の憲法軽視の姿勢は今に始まったことではないのでさしたる驚きはない。
首相の憲法違反の言動、政治的行動に格別の驚きを感じないというのは極めて異常な政治状態であることを示しているわけだが、そんな状態の中でもやはり驚くことはある。
航空自衛隊三沢基地(青森県)のステルス戦闘機F35が青森県沖の太平洋上に墜落した。約2か月という短期間の捜索、原因究明の結果、死亡したベテラン・パイロットが空間識失調という平衡感覚を失う状態に陥り、墜落の原因をつくったという推定の結論を出して、捜索、原因究明の努力を放棄した。
安倍首相は憲法9条を変える理由として、自衛官を父親に持つ子どものことを考え、自衛隊の存在を憲法に堂々と書き込む必要があると何度も繰り返してきた。しかし、そこまで自衛官のことを思うのならば、わずか2か月で捜索打ち切り、原因究明中止というのはあまりに諦めが早いのではないか。
安倍首相の言動と実際の行政行動とのギャップに驚く。
F35は安倍首相が1兆2000億円という巨額支出をして105機の追加購入を決めた次期主力戦闘機だ。
ベテラン・パイロットの墜落事故についてはもっと時間をかけて慎重に原因を追究すべきだろう。米国ロッキード・マーチン社が開発製造した機体には何も原因がなく、推定だけで自衛隊のパイロットに原因があったと結論を出すのはあまりに非論理的だ。まるでトランプ大統領やロッキード社に遠慮しているようではないか。