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どうした、枝野幸男! 2年前の原点を忘れるな

いざ参院選へ。野党は言葉を磨け。怒りをこめて、社会を創り直そう

保坂展人 東京都世田谷区長 ジャーナリスト

拡大党首討論で質問する立憲民主党の枝野幸男代表=2019年6月19日、国会

枝野氏の党首討論、怒りやパッションを感じず

 今回の「党首討論」は開催直前まで、安倍政権が「解散カード」と合わせて利用する材料だったことも特徴です。

 7年前、2012年11月14日の党首討論の印象は私たちになお強く残っています。当時の民主党政権の野田佳彦首相が「自爆的解散」を宣言し、翌月12月選挙で自民党に政権を手渡したあの場面です。それを思い起こして、安倍首相が「衆議院解散に踏み切るのでは」という観測も広がりました。

 党首討論が開催されてみると、日本維新の会の片山虎之助共同代表以外は「衆議院解散」に一言も触れないという事態となりました。

 確かに野党側は「解散・総選挙」への準備が遅れています。「ダブル選挙は避けたい」というのが本音であることは理解できます。

 ただ、選挙が怖くて腰を引いているように見えたら、野党の負けです。

 2年前の秋、当時の民進党が丸ごと希望の党に合流するという茶番劇の最終場面で出てきた「排除の論理」に敢然と立ち向かい、時間がほとんどない中で新党を立ち上げたのは枝野幸男代表でした。そして、立憲民主党が誕生しました。背水の陣で、前に進むしかないという枝野代表の気迫のこもった決断に有権者は拍手を送り、予想以上の議席を獲得したことを思い起こします。

 私は当時、枝野代表の決断を支持してこう書きました。

 土壇場で立憲民主党が出来上がり、演説会場はどこも多くの観衆を集めました。その期待値は想像以上に大きかったといえます。わずか78人の立候補にもかかわらず、短期間のうちに支持率は急伸して、50議席台とはいえ野党第一党となった同党の役割と責任も極めて重いと思います。枝野幸男代表が街頭で聴衆を前にして、「ボトムアップの政治」を呼びかけていたのが印象的でした。(『ハフポスト』 2017年10月30日「自民圧勝」10月総選挙で、「希望失速」と「立憲躍進」は何を物語るのか

 今回の党首討論で意外だったのは、安倍首相を前にした最初の20分の枝野代表の言葉から、怒りやパッションを感じる場面がほとんど見られなかったことです。

 政治は言葉の芸術であり、論理は政策の整合性等の組み立てをするのに不可欠ですが、怒りやパッションは身体や生活から染みだすものであり、人々の心をとらえるかどうかは、ここにかかっています。

 怒りの材料は事欠きません。

 「年金2000万円問題」をめぐる麻生財務大臣の迷走ぶりや「年金受給も秘書にまかせているので知らない」といった言動は、「年金2000万円問題」の波紋が大きいことを感覚的に理解出来ない恵まれた境遇に彼がいることを歴然と示しています。

 過去の答弁との整合性、秋田県の自衛隊基地に配備を計画している「イージス・アショア」をめぐる稚拙な計測ミスや関係者の居眠り、来日したトランプ大統領が首脳会談で口にした参議院選挙終了後の「8月に良い発表」、漁業法改正に関わる国家戦略特区ワーキングチーム座長とコンサル会社の問題…。あちこちでボヤが起きて、火の手があがっている状況です。

 当然、衆参の予算委員会を開催して集中的な議論をすべき段階ですが、与党は「開催しない」という一点で議論を封印しようとしています。簡単に言えば、この段階で予算委員会を開催することは参議院選挙のマイナスであり、損得勘定から開催を拒否するという単純な判断でした。

 その結果、今国会で世論が注視する「最初で最後の論戦の場」が、たった45分間の「党首討論」となってしまったのです。

 それでも党首討論は行われました。多くの人々の関心が深い年金問題について、安倍首相と野党党首が直接討論する場は一応は設けられたのです。

 ところが、その党首討論は、永田町用語で言えば「波静かに」実にあっさりと終わりました。

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筆者

保坂展人

保坂展人(ほさか・のぶと) 東京都世田谷区長 ジャーナリスト

宮城県仙台市生まれ。教育問題などを中心にジャーナリストとして活躍し、1996年から2009年まで(2003年から2005年を除く)衆議院議員を3期11年務める。2009年10月から2010年3月まで総務省顧問。2011年4月より世田谷区長(現在3期目)。 著書:「相模原事件とヘイトクライム」(岩波ブックレット)、「脱原発区長はなぜ得票率67%で再選されたのか?」(ロッキング・オン)、「88万人のコミュニティデザイン 希望の地図の描き方」(ほんの木) 近著に「〈暮らしやすさ〉の都市戦略 ポートランドと世田谷をつなぐ」(岩波書店2018年8月)、「子どもの学び大革命」(ほんの木2018年9月)他

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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