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私たちの心のかさぶたを剝がす辺野古新基地建設

6月23日の「慰霊の日」に、沖縄の現在地と未来への選択肢を考えたい

松元剛 琉球新報社執行役員・編集局長

沖縄を「同胞扱いしない」国の姿

 戦後74年を迎え、沖縄戦や南洋群島での戦火をくぐり抜けた戦争体験者は減り続け、県人口の約1割になった。体験を聞くことによる沖縄戦の継承は難しくなり、大きな課題となっている。凄惨(せいさん)な地上戦が繰り広げられた沖縄戦体験者の4割は心的外傷を持つとされる。その傷口に塩を塗り込むように、今も米軍機が爆音をまき散らし、民意に反して名護市辺野古への新基地建設が強行されている。

辺野古1拡大辺野古沿岸部で進む埋め立て工事=2019年6月13日午後0時59分、沖縄県名護市、日吉健吾撮影

 沖縄を「同胞扱いしない」国の姿を感じ取り、悲惨な経験を語り始めた沖縄戦体験者が増え続けている。自らの意思で沖縄のありようを決めることができない負の歴史を終わらせ、子や孫の世代に戦争につながる基地負担を背負わせたくないという意思をもつ人たちだ。沖縄戦と米軍統治の苦難の戦後を縦糸に、新たな基地を強要する為政者への反発を横糸にした新基地ノーの重層的な民意が強まっている。沖縄戦と今に続く米軍基地の重圧はまぎれもなく、地続きの問題である。

 沖縄戦の記録映像の中でも、最も印象的な映像の一つに登場する幼子が、戦後74年の歳月を経て、初めて戦争の恐怖を証言した。

 今年の慰霊の日当日、23日付琉球新報は1面トップで、米軍が撮影した沖縄戦の記録映像の中で最も印象深く、沖縄戦を振り返る報道でも頻繁に用いられている「震える少女」について、「これは私だ」と名乗り出た女性を特報した。

琉球新報1面拡大米軍が撮影した「震える少女」は「自分だ」と名乗り出た浦崎さんの記事をトップに据えた琉球新報6月23日付1面(琉球新報提供)
 浦崎(旧姓・賀数)末子さん(81)=那覇市小禄=がその人だ。45年6月下旬ごろ、糸満市(当時は高嶺村)大里の農道で、2人組の米兵にカメラを向けられた。当時7歳だった浦崎さんは「初めて見るアメリカー(米国人)の青い目が怖くてぶるぶる震えた」と証言した。15歳上の姉と一緒に避難場所を探している途中だった、という。浦崎さんの脳裏には、今も砲弾が飛び交う戦場を逃げ惑ったつらい記憶が消えない。2年前、知人が持ってきた映像の静止画像を見て鮮明な記憶がよみがえり、着物の柄を見て「自分だ」と確信したという。

 映像が撮影された後、浦崎さんは、本島中部の越来村(現・沖縄市)にあった米軍の収容所に姉とともに収容された。母と弟にも再会したが、弟は避難先の自然壕(ごう)で受けた催涙弾の影響でその後、亡くなった。防衛隊に召集された父と兄、さらに戦時中に受けた傷が原因で姉も亡くした。

 不戦を願う浦崎さんはこう証言を締めくくった。

 「弟は病床で『おー、おー、おー』とうなって死んでいった。戦争は本当に恐ろしい。またんあてーならん(二度と起こしてはならない)」

慰霊の日1拡大ぐずつく天気の中、早朝から魂魄の塔に手を合わせる人たち=2019年6月23日午前7時30分、糸満市米須(琉球新報提供)

家族連れで辺野古の浜を訪れる人が増えている

 私はここ十数年間、1月1日の早朝、米軍普天間飛行場の移設を伴う名護市辺野古への新基地建設現場に近い名護市辺野古の浜を訪ねるようにしている。県内全域から数百人の市民が夜明け前から訪れ、初日の出を見ながら、目の前の海に新たな基地を造らせてはならないという思いを共有する場になっている。毎年のように、本土から訪れる人たちもいる。

辺野古1拡大土砂投入から14日で半年となる辺野古沿岸部の埋め立て工事現場=2019年6月13日午前9時57分、沖縄県名護市、朝日新聞社ヘリから、堀英治撮影

 2013年末、当時の仲井眞弘多知事が、政府の埋め立て計画を承認して以来、それに抗うように家族連れで辺野古の浜を訪れる人たちが増えている。沖縄で基地報道に携わる者として、民意の重さを肌で感じる大切な時間である。毎年、孫を連れた老夫婦、生まれて間もない赤ちゃんを抱く若い夫婦がいて、できるだけ、話を聞くようにしているが、ほぼ共通しているのは、「子や孫のために、新たな基地を造らせてはならない」という言葉だ。

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筆者

松元剛

松元剛(まつもと・つよし) 琉球新報社執行役員・編集局長

 

1965年那覇市生まれ。駒澤大学法学部卒。89年琉球新報社入社。社会部警察・司法担当、中部支社報道部、2度の政経部基地担当、編集委員、経済部副部長などを経て、2010年4月から政治部長兼論説委員。13年4月から編集局次長兼報道本部長、16年6月から論説副委員長を兼務。17年4月に読者事業局次長、18年6月から執行役員・読者事業局特任局長。19年4月から現職。

 

共著に『徹底検証 安倍政治』(岩波書店)、『内心、「日本は戦争をしたらいい」と思っているあなたへ』(角川書店 新書oneテーマ21)、『検証 地位協定 ―日米不平等の源流』(琉球新報社編、高文研)、『〈沖縄〉基地問題を知る事典』(吉川弘文館)、『ルポ・軍事基地と闘う住民たち』(琉球新報社編、NHK出版)、『観光コースでない沖縄(第4版)』、高文研)、『沖縄 自立への道を求めて』(高文研)など。

 

雑誌『世界』(岩波書店)で、2008年4月から輪番コラム「沖縄(しま)という窓」を連載中。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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