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年金不安を根本から解消するために

野党政治家3人が年金抜本改革チームを立ち上げた。真面目な議論を紹介していきます!

階猛 衆議院議員

年金不安を根本から解消する政策を提言するため結集した階猛氏(筆者、右)、井坂信彦氏(左)、井出庸生氏=衆院議員会館

「年金抜本改革チーム」旗揚げ

 老後の生活費が2000万円不足するとした金融審議会の分科会の報告書をきっかけに、公的年金制度への不安が高まっている。

 麻生大臣は自ら諮問して作成させた報告書を受け取らず「火消し」に走ったが、むしろ「火に油」を注いでいる状況だ。6月19日に開かれた党首討論でも、各党党首がこぞってこの問題を取り上げた。

 普通の国民が公的年金制度に抱いている不安に正面から向き合い、これを根本から取り除く政策を提言したい――。そんな思いを共有する三人が、党首討論の直後、議員会館の一室に集まった。

 議論のたたき台を用意してくれたのは、井坂信彦前代議士(国民民主党、兵庫1区)。年金制度への造詣が深い。数年前の衆院予算委員会では「年金カット法案」の本質を誰よりも簡潔明瞭に指摘し、与野党議員から一目を置かれてきた。

 事務所を提供してくれたのは、井出庸生代議士(無所属、長野3区)。筆者と同じ東大野球部出身のスポーツマン。服装も性格も飾らない実直な人柄で、情報公開制度の改善など自ら関わった政策課題の解決に向け、粘り強く取り組んできた。

井坂信彦氏  前衆議院議員(兵庫1区)。京都大学総合人間学部卒。神戸市会議員を経て2012年から2017年まで衆議院議員。維新の党政調会長、民進党厚生労働委員会理事などを歴任。野党ながら数多くの議員立法を起草して実現、国政への復帰を目指して活動中
井出庸生氏  衆議院議員(長野3区) 1977年生まれ、無所属。東京大学在学中は硬式野球部主将。NHK記者を経て2012年初当選、現在3期目。会派「社会保障を立て直す国民会議(代表・野田佳彦)」メンバー。野球部先輩にあたる階猛氏と、初当選同期の井坂信彦氏との強い絆で、年金政策に取り組む

 そして最年長の筆者(無所属、岩手1区)。この三人が結集し、「年金不安を根本から解消する政策」を徹底的に練り上げて提言するチームを立ち上げたのだ。

 筆者は2007年衆院補選で初当選した後、郷里の大先輩・小沢一郎氏や民主党若手ホープだった細野豪志氏を懸命に支えてきたが、決別。国民民主党を離党して政治塾「新時代いわて」を旗揚げした経緯は、前回の記事『なぜ私は、国民民主党を離党したのか』で説明したとおりである。

 政党に所属していた時には困難だったことだが、これから政策立案のプロセスを発信していきたいと思っている。国会議員や国政を目指す政治家たちは日頃どのような議論をしているのか。国民の関心の高い年金問題を題材に、政治家の政策立案の場の肉声をありのまま伝えていきたい。そして読者のご意見も参考にしながら、中身の濃い提言にするのが目標だ。

 もちろん、新しいメンバーは大歓迎だ。

Khongtham/Shutterstock.com

ゴールをどこに置くか

 冒頭、井坂氏が公的年金への不安を解消するための四つの論点を挙げ、これを元に三人で議論を行った。

 第一に、最低保障機能

 いかなる境遇にあっても、憲法25条が保障する「健康で文化的な最低限度の生活」を老後に送れるようにするための公的年金制度を構築する必要がある。

 その際、制度の公平性や分かりやすさを重視すれば「月額〇万円の最低保障年金」という建付けが想定される。

 しかし当然のことながら、それぞれの高齢者ごとに保有財産や家族構成、居住形式(持ち家か賃借か)などが異なる。こうした個別事情にも配慮しつつ、最低保証機能を備えた制度を考える。

 第二に、世代間公平

 現在の公的年金制度は現役世代が支払う保険料を高齢者の年金の原資に充てる、いわば「世代間の仕送り」だ。「賦課方式」と呼ばれるこの制度だと、少子高齢化が進むにつれて「入」が少なく「出」が多くなるため、年金財政が悪化してくる。

 この「入」と「出」の変化に応じ、年金の給付水準を徐々に切り下げていく仕組みが「マクロ経済スライド」だ。これを導入すれば「100年安心年金」になるという触れ込みだったが、出生率が劇的に改善しない限り公的年金は先細り、後の世代になればなるほど損をする仕組みになっている。

 世代間の公平を担保し、現役世代の納得感、安心感を確保するには、自分が支払う年金保険料は自分の年金として返ってくる「積立方式」が理想だ。その実現可能性とともに、世代別会計や擬似積立方式などを検討する。

 第三に、財源

 最低保障機能と世代間公平を兼ね備えた公的年金制度を運営するための財源をどうするか。「給付」と表裏一体をなす「負担」の配分の問題であり、政治的には一番厄介だ。

 各人の負担能力に応じて税や保険料の負担を求めるのが基本だが、負担が重すぎて経済活動に悪影響が及ばないようにすべきだ。

 公正で負担感がなるべく少ない財源調達方法を考える。

 第四に、他の収入源

 以上の論点がクリアされ、公的年金制度への不安を解消することは、老後の「セーフティネット」を整備するということだ。

 人生100年時代となり、一人でも多くの高齢者が「健康で文化的な最低限度の生活」を上回る、「豊かで充実した生活」を送れるようにしたい。

 そのためには公的年金以外の収入も必要だ。今回の報告書は貯蓄や運用で老後の資金を得ることを強調するが、これができるのは一部の高齢者に過ぎない。

 手元に金融資産がなくても高齢者が生きがいを感じながら無理なく収入を得られるよう、多様な仕組みを用意したい。

党首討論で、安倍晋三首相(中央)から返された金融庁の審議会報告書を、麻生太郎財務相兼金融相(前列右から2人目)に渡そうとする国民民主党の玉木雄一郎代表(左)=2019年6月19日

 議論の焦点

 最低保障機能に関しては、生活保護制度との関係が議論となった。

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