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香港デモの背後に見える「中国化」への我慢の限界

条例改正案を契機に始まった経済と民生の問題を解決しない政府に対する抗議活動の面も

姫田小夏 フリージャーナリスト

7人に1人が新移民

 他方、香港特別行政区政府は、中国からの「新移民」を積極的に受け入れている。香港返還から20年を経た2017年には、その数は100万人を超え、「7人に1人が新移民」といっても過言でない時代になった。定住を許可するビザ発給の割り当ては、1982年に香港英国政府と中国政府の間で一日75件と協議されたが、1993年から150件に倍増している。

 また、香港経済日報は、2018年における香港の人口増加は前年比で6万9400人、うち大陸からの「新移民」は4万2300人だと報じた。公営住宅申請の待ち時間が2005年を底に年々上昇を続けているのも「そのせいだ」と、香港が抱える社会問題を「新移民」に結びつける見方が強い。

拡大公営住宅は平均5.5年待ち
 最近、香港では「独房より狭い住宅に住む市民」に関心が集まっている。ここでいう独房は広さが75平方インチ(約4畳)に相当するが、多維新聞は「約21万人が独房以下の56.5平方インチの住宅で生活している」と報じている。

 これが示すのは「格差問題」でもある。香港政府の扶貧委員会によれば、香港の貧困人口は2016年に135万人とされており、過去8年を振り返ると、2011年の129万人を底に毎年増え続けているという。

 2018年は「香港が大陸と完全に一体化した年」として象徴的な年となった。「粤港澳大湾区」の名のもとに、広東省の 9 都市に香港とマカオを加えた 11 都市で構成される一大経済圏構想が進められているが、昨年、香港は全長142キロの「広深港高速鉄道」で広州とつながり、大橋の開通で珠海ともつながった。

 繁体字のインターネットには「移動がこれほど短時間になれば、もっと押し寄せてくる」と懸念するコメントが随所に見られる。実際、2018年には大陸から5100万人の観光客が香港を訪れ、外国人観光客の8割を占めるに至った。2017年に香港を訪れた大陸からの中国人観光客は4444万人だったから、1年で656万人(14.7%)も増えたことになる。ちなみに香港の人口は745万人だ。

 筆者の大陸の友人張君も2018年に香港を訪れたが、「普通語で話すと店員のサービスが極端に悪化する」とぼやいていた。同じことを筆者も経験したが、香港市民は大陸から溢れ出てくる旅行客に「もう勘弁してくれ」と冷たい。マナーの問題には日本人以上に敏感だ。

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筆者

姫田小夏

姫田小夏(ひめだ・こなつ) フリージャーナリスト

東京都出身。アジア・ビズ・フォーラム主宰。上海財経大学公共経済管理学院・行政管理学修士(MPA)。中国ウォッチは25年超、うち約15年を上海で過ごす。1998年末に上海で、2002年には北京で、日本人向けビジネス情報誌を創刊し、10年にわたり同誌編集長を務める。2008年春に退任後、中国とアジアを追うフリージャーナリストとして活動を開始。2014年以降は東京を拠点に内外を現地取材、中国が遂げる変革の行方、インバウンドがもたらす日本の変化、アジアにおける中国の影響をローアングルで追っている。著書に『インバウンドの罠』(時事通信出版局)ほか、長期連載にダイヤモンドオンライン『チャイナレポート』など。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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