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香港200万人デモにお母さんたちが参加したわけ

「子どもに催涙弾を浴びせるなんて」と“香港の母”林鄭月娥氏の辞任を要求の署名も

姫田小夏 フリージャーナリスト

それでもあった「不参加」の声

 今回は最大規模の200万人規模に膨れ上がった今回のデモだが、それでもやはり「デモ参加には反対」という声もあった。「反対」の理由は大きく分けて二つある。ひとつは経済的な理由で「これ以上デモを続けると、香港の特殊な地位を失うことにもなりかねない」というものだ。

 香港経済日報は、「香港のデモを中国が鎮圧に出て、香港の高度な自治が失われるようなことにでもなれば『米国―香港政策法』が取り消されるかもしれない」と報じている。

拡大農産物も水も中国から送られてくる
 「米国―香港政策法」とは、高度な自治を認めた「一国二制度」を前提に米国が香港の扱い方を規定した法律で、香港の中国返還と同時に発効した。ただ、このところますます中国依存を高める香港に対し、米議会で「香港に与えられた自由貿易や国際金融のハブといった特殊な地位を見直すべきだ」との考えが浮上するようになった。

 米中貿易戦争の長期化で、機密性の高い技術は中国との取引が禁止されているが、香港を経由すれば調達できるのも「米国―香港政策法」があるからこそ、だ。デモによる混乱が続けば“抜け道経済”も失いかねない。香港ビジネス界がデモに慎重なゆえんだ。

 こうした見方に加え、「デモは不支持だ」とするもう1つの理由がある。日本に駐在する香港人女性のベロニカさん(仮名)は、あくまで個人の意見とし、次のように語ってくれた。

 「デモは不支持というよりも、『やっても無駄』という考えがあります。そもそも、『一国二制度』において香港と中国は切っても切れない“親子関係”にあります。その香港の住民が必要とする水も農産物も、ほとんどすべてが大陸から送られてくるのです。デモをやろうとやるまいと、もはや、もがいたところで中国に背を向けることはできないのです」

 ベロニカさんにも香港に戻る日が到来する。その香港で生きていくためには、命運を受け入れ、“心のスイッチ”を切ることが最良の“処世術”なのだ。

重い腰を上げたお母さんたち

 このように参加・不参加をめぐり賛否両論が存在するなかで、デモは200万人規模にまで膨張した。6月9日は103万人だから、実に倍の規模である。6月16日のこのデモには一体、誰が参加したのだろう。

 16日のデモについては日本でも各紙が報じたが、その画像からは、「子どもは暴徒ではない」「学生は暴動を起こしていない」といったスローガンを掲げる保護者の姿が見て取れた。テレビの映像にも「このまま中国の影響が強まれば、子どもたちの世代が大変なことになる」と懸念する親子の参加者が映し出された。

 雨傘運動の際は、デモのうねりに身を投じる息子や娘に、香港のお母さんたちは「学生の本分は学業だ」と一線を画していた。だが、16日の抗議行動に姿を現したのは、なんと彼らの“お父さんやお母さん”だったのである。5年前は静観していた保護者たちだが、今回ばかりは重い腰を上げたのだ。

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筆者

姫田小夏

姫田小夏(ひめだ・こなつ) フリージャーナリスト

東京都出身。アジア・ビズ・フォーラム主宰。上海財経大学公共経済管理学院・行政管理学修士(MPA)。中国ウォッチは25年超、うち約15年を上海で過ごす。1998年末に上海で、2002年には北京で、日本人向けビジネス情報誌を創刊し、10年にわたり同誌編集長を務める。2008年春に退任後、中国とアジアを追うフリージャーナリストとして活動を開始。2014年以降は東京を拠点に内外を現地取材、中国が遂げる変革の行方、インバウンドがもたらす日本の変化、アジアにおける中国の影響をローアングルで追っている。著書に『インバウンドの罠』(時事通信出版局)ほか、長期連載にダイヤモンドオンライン『チャイナレポート』など。

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