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イスラエル人ジャーナリスト、ヤーリ氏に聞く

トランプ大統領の中東和平案「世紀の取引」に日本はどう対応すべきか

徳留絹枝 ブログ「ユダヤ人と日本:理解と友情の架け橋のために」管理者

ゴラン高原についてイスラエルの主権を正式に認める署名した文書を記者団に見せるトランプ米大統領(左)とイスラエルのネタニヤフ首相=ワシントン、ランハム裕子撮影2019年3月25日拡大ゴラン高原についてイスラエルの主権を正式に認める署名をした文書を見せるトランプ米大統領と(左)とイスラエルのネタニヤフ首相=2019年3月25日、撮影・ランハム裕子

 イスラエル・アラブ(パレスチナ)関係を40年以上報道してきたエフード・ヤーリ氏は、イスラエルで最も尊敬されるジャーナリストの一人だ。1977年、エジプトのサダト大統領が電撃的にイスラエル訪問をした時、それをカバーしたヤーリ氏は、エジプトからビザを発給された最初のイスラエル人となった。その後も歴代のイスラエル首相、アラファトPLO(パレスチナ解放機構)議長、クリントン米大統領など、中東和平問題に取り組む主役たちにインタビューをしてきた。ネタニヤフ首相とも頻繁に話し合う間柄だという。

 筆者は最近イスラエルを訪問した際、ヤーリ氏にインタビューする機会を得た。日本との関連で幾つか質問をしたが、彼の答えは明快だった。

――日本は、トランプ大統領の中東和平案「世紀の取引」を支持すべきでしょうか?

ヤーリ トランプ案に何が含まれているのかまだ分かりません。でも日本は、そして他の政府もですが、それを否定することは何の助けにもならず、危険な状況を生み出すことを認識すべきだと思います。パレスチナによる完全拒絶は、パレスチナ自治政府解体、1993年のオスロ合意からの撤退、果てはイスラエル国認定の取り消し、といった破壊的展開に繋がり得るからです。これはとても危険なことです。全てを後退させてしまうからです。

エフード・ヤーリ氏拡大エフード・ヤーリ氏(左)と筆者
 私は先週、ジャレッド・クシュナー大統領上級顧問がトランプ案について講演した Washington Institute for Near East Policy のイベントに出席してきました。私もこのシンクタンクの研究員なので。そのうえで私が考える責任ある対応は次のようなものです。

 「和平案全部をそのまま受け入れることはできないかもしれない。でも、何か前向きな内容が含まれていないか検討してみよう。そしてトランプ案を、受け入れるか拒絶するかしか選択肢がない申し出としてではなく、対話の出発点として考えよう」

 パレスチナ自治政府はNOと言うでしょう。でも彼らがNOというのは今に始まったことではありません。私は、これまでの人生の全てをイスラエル・パレスチナ関係の報道に費やしてきました。ですから彼らがまたNOと言うだろうことを知っています。でももし、アラブ国や欧州諸国や日本が「拒絶ありきではなく、案を何とかよいものに改善できないか、一緒に考えてみよう」と言ったらどうでしょう。真剣な対話の再開に繋がると私は思います。

 パレスチナ自治政府は破産状態で、腐敗しきっています。政治的にデッドエンドに到達しています。彼らは経済活動を生み出していません。例えば、日本が支援するジェリコ農産加工団地プロジェクトから得られるべき利益を得ていません。日本政府の惜しみない支援をフルに生かしていないのです。

 湾岸諸国やエジプトなどの国々では、この件に関する論評記事をよく見かけます。それは、「パレスチナ自治政府よ、我々はあなた方のパフォーマンスを何十年も見てきたが、全く何も達成されなかった。あなた方がもっとましな仕事ができるよう、私たちが助けられると思う」といった内容です。私が願っているのも同じことです。トランプ案はエンドゲームではなく、出発点なのです。

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筆者

徳留絹枝

徳留絹枝(とくどめ・きぬえ) ブログ「ユダヤ人と日本:理解と友情の架け橋のために」管理者

シカゴ大学で国際関係論修士号取得。サイモン・ウィーゼンタール・センターのアドバイザー。著書に『旧アメリカ兵捕虜との和解:もうひとつの日米戦史』、『忘れない勇気』、『命のパスポート』(エブラハム・クーパー師と共著)など。日本で知られないイスラエルの横顔に関する本を執筆中。