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同日選を見送った安倍首相。長期政権の限界と今後

政権交代の時代における長期政権のあり方を示した安倍政権だが……

牧原出 東京大学先端科学技術研究センター教授(政治学・行政学)

拡大首相官邸に入る安倍晋三首相=2019年6月25日

支持の源泉は「精いっぱい頑張っている」

 6月19日に行われた1年ぶりの党首討論を見た。野党党首がそれぞれ見せ場を作ろうと自党のアピールを込めた質問を投げつける。これに対する安倍首相はと言えば……やはり安倍首相だった。

 精いっぱいの愛想笑いはこわばり、薄ら笑いのように見えてしまう。側近が作成したであろうペーパーをもとに頭に叩き込んだ政府の政策、たとえばマクロ経済スライド、について説明を語りはするものの、質問への答えにはなっていないうえ、雄弁とは程遠い。そのどこか鈍感だが、精いっぱい「頑張っている」姿は、ごくごく普通の人である。

 だが、ここにこそ、安倍首相が支持される一つの面がある。すなわち、熱狂的なポピュリズムではなく、「ちゃんとやっているのであれば支持する」という、ある意味冷静な一般国民の政治への態度こそが、支持の源泉なのである。

ダブル選なしに見え隠れする守りの姿勢

 通常国会が閉会し、政治の舞台は7月21日投開票の参院選に移る。政権に返り咲いて以来、すべての国政選挙に勝利を収めてきた安倍首相にとって今回の選挙は、あれほど騒がれたにもかかわらず、衆参ダブル選挙ではなく参院選単独になった。そこに見え隠れするのは、与党の守りの姿勢である。

 確かに、内閣支持率も自民党支持率も高い。だが、それは新年度予算案の成立後、衆議院予算委員会を開かず、安倍首相を国会にできるだけ出さなかったこと、いわば「安倍隠し」によって支持率をキープするという、守りの姿勢の所産である。実際、その間、政府は内政の目玉となるような新しい政策を何も発表していない。安倍首相の任期が残り2年となるなか、いよいよ政権をたたむ方向へと徐々に舵(かじ)を切りつつあると考えざるを得ない。

 そこで、通常国会の閉会を機に、安倍内閣を来し方をあらためて振り返りつつ、この内閣の行く末、さらに今後の政治が向かう先について考えてみたい。


筆者

牧原出

牧原出(まきはら・いづる) 東京大学先端科学技術研究センター教授(政治学・行政学)

1967年生まれ。東京大学法学部卒。博士(学術)。東京大学法学部助手、東北大学法学部教授、同大学院法学研究科教授を経て2013年4月から現職。主な著書に『内閣政治と「大蔵省支配」』(中央公論新社)、『権力移行』(NHK出版)など。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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