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同日選を見送った安倍首相。長期政権の限界と今後

政権交代の時代における長期政権のあり方を示した安倍政権だが……

牧原出 東京大学先端科学技術研究センター教授(政治学・行政学)

政権交代時代の長期政権の形を示す

拡大通常国会閉会日、参院本会議が散会し、議場を出る議員ら=2019年6月26日

 第2次以降の安倍内閣は、憲政史上、最長政権となることはほぼ確実である。だが、最長であること自体には、今やさして意味はない。諸外国をみれば、政権交代を経てこれくらいの年数で政権を率いているリーダーはいくらでもいるからである。

 この政権は、憲政史上2度目の政権交代によって成立した。また、憲政史上初めて、かつて与党であった政党が政権交代によっていったん下野した後、次の政権交代によって復帰した政権であった。「そうした政権交代を経ても、長期安定政権が可能である」ことを示したこと。それが第2次以降の安倍内閣の最大の成果なのである。

 民主党による2009年の政権交代まで続いた「自民党政権」(かたちは連立政権でも、自民党が圧倒的に大きな力をもった)のもとでは、自民党という枠組みの中でよりよい首相候補があれば、国民はそちらを選択し、既存の政権に「ノー」を突きつけた。竹下登内閣や森喜朗内閣の末期の一桁の内閣支持率はその現れである。

 だが今は、政権がどうにも行き詰まり、与党支持層までもが雪崩をうって「野党に政権を担ってほしい」とでも考えない限り、内閣支持率が20パーセントを切ることはない。安倍内閣は、そうした底堅い政権基盤の上に立ち、強固なチームワークを誇る「官邸チーム」が、危機管理・経済・外交を中心に政権を運営した。その結果、安定した政治環境が作り上げられたのである。

一度目の「失敗」を「強さ」に転化

 振り返れば、2000年代半ば以降、1年で交代する短期政権が続くきっかけとなったのは第1次安倍内閣であった。長期政権であった小泉純一郎内閣を継いだ安倍内閣は、不祥事の続発と閣僚の大量辞任が続くなか、「消えた年金」問題に安倍首相が対応しきれず、参院選で大敗して崩壊した。

 そんな短期政権時代に終止符を打ったのも安倍首相である。いかにも矛盾をはらんだ平成政治の「一幕」と言えるが、第1次安倍内閣がまるでバラバラだったのに対して、現在の安倍内閣はバラバラとは真逆な「強固な政権チーム」に支えられている。

 政治家として安倍氏は、かつてはぶら下がり会見で、今は国会審議で、的を外したような受け答えをし、こみいった政策をたどたどしく説明するといった具合に、鮮やかさは微塵もない。だが、同じ人物でありながら、強固なチームに支えられれば、これほどまでに政権は浮揚する。

 一度目の政権にいたメンバーを多く含むチームであればこそ、二度目は失敗しなくなる。これは、政権交代の時代に特有な政権の立ち上げ方であろう。そこに安倍首相がつくり出した混乱を、安倍首相だからこそピリオドを打てた理由がある。まさしく政権交代の時代ならではの政権の立ち上げ方である。

 であるならば、野党もまた、政権を担った経験が少しでも継承されていれば、安倍首相のように「二度目」のチームを組んで政権に復帰することも不可能ではない。つまり、現政権が示しているのは、政権交代の時代とは、過去の政権の負の遺産を、もう一度政権を組織して払拭することができるし、その必要があるということなのである。

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筆者

牧原出

牧原出(まきはら・いづる) 東京大学先端科学技術研究センター教授(政治学・行政学)

1967年生まれ。東京大学法学部卒。博士(学術)。東京大学法学部助手、東北大学法学部教授、同大学院法学研究科教授を経て2013年4月から現職。主な著書に『内閣政治と「大蔵省支配」』(中央公論新社)、『権力移行』(NHK出版)など。

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