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電撃的な米朝会談に応じた北朝鮮が考えていること

亡命エリート外交官が分析する北朝鮮の真意、思惑、拉致問題解決の秘策とは。

高橋 浩祐 国際ジャーナリスト

北朝鮮外交の3つの原則

 北朝鮮の外交は3つの原則に立脚している。

 第一に、いかなる状況においても北朝鮮は核を放棄しない。

 第二に、いかなる場合でもアメリカは北朝鮮を攻撃できない。

 第三に、いかなる場合でも中国は北朝鮮を手放せない。

 核兵器の開発のきっかけとなったのは朝鮮戦争のトラウマだ。当時、党がどんなに「アメリカはけっして原爆を落とさない。南下しないように」と宣伝しても、避難民を統制できなかった。全員を銃殺するわけにもいかなかった。

 手をこまねいて避難民の行列を眺めていた金日成(キムイルソン)は、そのとき核兵器の威力を痛感する。物理的、軍事的威力ではなく、人間に与える心理的な威力に対してだ。金日成が原子爆弾の開発を決心し、核に執着しはじめたのもこのときからだ。

拡大平壌空港で金正恩・朝鮮労働党委員長(右)の出迎えを受ける中国の習近平国家主席=2019年6月20日、労働新聞ホームページから
 次に、韓国ではいまだに米朝の非核化交渉が失敗したら、アメリカが北を軍事攻撃すると思っている識者がいる。

 しかし、金正恩氏は北朝鮮が核を既に持っているから、アメリカから先に攻撃をしかけることはないと確信している。アメリカは歴史的に戦争を仕掛ける場合、自国民の犠牲をまず計算して考える。ところが、韓国には在韓米軍が2万5000人、民間の米国人が24万人いる。アメリカが北を攻撃し、北が報復攻撃をした際、アメリカは韓国にいるアメリカ人が何人死ぬのかを見積りをしなくてはいけない。しかし、アメリカはその見積りをそもそもできないだろう、と北朝鮮は考えている。

 いかなるアメリカの大統領であれ、韓国にいる自国民が多数犠牲になると分かっていれば、アメリカは先に手出しをできない。これが金正恩氏の確信になっている。

 次に、北が核を保有しても、中国は北をどうすることもできない。北の核保有の問題と、北朝鮮の政権の安定のどちらを取るかと言われれば、中国は、北朝鮮の政権の安定を優先する。核が北朝鮮の体制の安全を保証し、米軍が朝鮮半島を北上してくれるのを防ぐのであるならば、中国は北の核保有を認めるしかない。金正恩氏は、そのように中国の足元をみている。

 なので、北朝鮮の核問題の解決のカギは、トランプではなく、中国の習近平国家主席が握っている。もし習近平主席が決意して北朝鮮の核兵器を取り上げようと考えたならば、私の試算では2年あれば北朝鮮は降参する。

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筆者

高橋 浩祐

高橋 浩祐(たかはし・こうすけ) 国際ジャーナリスト

英国の軍事専門誌「ジェーンズ・ディフェンス・ウィークリー」東京特派員。1993年3月慶応大学経済学部卒、2003年12月米国コロンビア大学大学院でジャーナリズム、国際関係公共政策の修士号取得。ハフィントンポスト日本版編集長や日経CNBCコメンテーターを歴任。朝日新聞社、ブルームバーグ・ニューズ、 ウォール・ストリート・ジャーナル日本版、ロイター通信で記者や編集者を務める。

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