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人口減少問題解決のカギは女性の政治参加にあり

元参院議員・円より子が見た面白すぎる政治の世界⑮平成で解決できなかった日本の課題

円より子 元参議院議員、女性のための政治スクール校長

「世代内扶養」そして「All for All」

拡大「All for All」みんなはみんなのために。つまり、一人も取りこぼさないという思いを込めた井手英策さんの案に賛同し、前原誠司さんは党代表選を闘った=2017年7月28日
 しかし、65歳以上でも3千万円以上の貯蓄がある世帯は、全体の12.5%もある。貯蓄なし世帯(16%)との格差が広がっている。負担増になる世帯からは不満が飛び出すだろうが、高齢者といえども資産のある人は医療や介護の自己負担を、働く世代と同様に負ってもらうしかない。いわゆる「世代内扶養」である。

 しかし、それより思いきって、すべての人を対象に教育費と医療費・介護費を無料にしようという案がある。無料にということは、サービスを受けられるようにするということだ。

 いま、高収入で高資産の人や中収入中資産の人は増税感を持ち、支払った税金の恩恵を受けていないのではないかという疑念を持っている。それどころか低収入低資産の人ばかりに税が使われており、自分たちは働き損ではないかと思っている。働いても働いても賃金が上がらないのに、という不満も出ている。それが、生活保護受給者へのバッシングにつながったりする。

 そうした人々の間の分断と社会の分断を失くすためにも、収入にも資産にも関係なく教育・医療のサービスを受けられる仕組みにしようという案だ。これは慶應義塾大学の井手英策教授の提案である。民進党代表だった前原誠司さんは2017年、この井手さんの提案を採用し、「All for All」(みんながみんなのために)を旗印にした。

 介護保険ができて、個人と家族が負担してきた介護の一部が社会化された。介護は妻と嫁の役目という社会通念が強かったから、介護保険導入には多くの反対と苦労があった。
思い出すのは、政治家や経済界の男性対象にアンケートをした時、女性たちがあきれて笑ってしまう解答である。「あなたより配偶者が先に逝ったら、あなたの介護は誰がするか」という問いに「妻には私より先に逝くなと厳命している」と。

「教育も保育も親の責任」のおかしさ

 現在、教育の社会化が大きな抵抗にあっている。2009年に政権交代した民主党が、子ども手当や高校無償化を打ち出した時もそうだった。我が国では、教育は個人が負担するもの、親の責任という意識が強いからだ。

 実際、小学校から大学までの教育機関に対する公的な教育支出がGDPに占める割合は3%程度しかなく、OECD諸国中、下から2番目という低さだ。

 高齢者福祉や子育てなどの公共サービスについて、「政府の責任か、個人や家庭の責任か」を問うた2010年の調査では、年金は6割の人が、高齢者医療は7割の人が「政府の責任」と答えているのに対し、教育では3割、保育・育児も3割に届かなかった。

 子どもの貧困が言われて久しく、収入格差は健康格差、学力格差につながっている。働かなくては食べていけないのに、保育所には入れない。「日本死ね、保育園おちた」という一人の母親のブログが日本中の女性や、子どもを育てる男性たちにも共感を呼んだのは、教育も保育も親の責任と考えがちな国民の意識に甘えて、高齢の有権者の声だけに耳を傾けてきた政治への大きな怒りだったのだ。

 かつて1989年に1.57ショックが列島中をかけ回った。一人の女性が一生の間に産む合計特殊出生率が、ひのえうまの年よりも低くなったことに人びとは驚いたが、さりとて政治が何の有効策も取らなかった間に、子どもを産める女性の数が落ち込み、もはや出生率を上げたところで出生数は減り続ける事態になってしまった。

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筆者

円より子

円より子(まどか・よりこ) 元参議院議員、女性のための政治スクール校長

ジャパンタイムズ編集局勤務後、フリージャ―ナリスト、評論家として著書40冊、テレビ・講演で活躍後、1992年日本新党結党に参加。党則にクオータ制採用。「女性のための政治スクール」設立。現在までに100人近い議員を誕生させている。1993年から2010年まで参議院議員。民主党副代表、財政金融委員長等を歴任。盗聴法強行採決時には史上初3時間のフィリバスターを本会議場で行なった。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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