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私、安田純平は「出国禁止」状態にあります(下)

消滅した自己責任論。「自己責任」を取らせない政府。

安田純平 フリージャーナリスト

私は「インド・欧州」への「家族旅行」なのに

拡大帰国直後、出迎えた妻の深結(みゅう)さん(手前左)や両親(後列)と再会を喜ぶ安田純平さん=2018年10月25日、深結さん提供
 私の旅券発給申請は、渡航先が「インド・欧州」で、渡航理由は「家族旅行」だ。

 これをどのように「著しく、かつ、直接に日本国の利益又は公安を害する行為を行うおそれがあると認めるに足りる相当の理由がある者」に該当させるのだろうか。

 旅券法13条1項7号は文言が漠然としていて不明確であるという指摘があり、「旅券法逐条解説」(有斐閣・旅券法研究会編著)に以下のような解説がある。同著は「外務省担当官などの有志による旅券法研究会が逐条形式で規定の趣旨・意義・解釈等を詳細に検討。旅券法唯一の解説書」とされている。

 本号の規定のうち、「著しく」とは「そういうおそれのあることが(中略)非常に顕著である」(林修三政府委員の説明。第一二回衆議院外務委員会議事録八号一頁)ということであり、「直接に」とは「(旅券発給を)拒否する理由とそのおそれがある行為との間に直接関係がある場合、間接でない、(中略)非常に直接のつながりがある」(同上)ことを意味している。また、「相当の理由がある」というのは、「通常人の合理的な判断によりまして、嫌疑を肯定することができる理由があるというような場合」(西本定義説明員による説明趣意。第一二回衆議院外務委員会議事録七号一八頁)であり、単なる風説等ではなく諸種の具体的資料を総合して、「何人が考えても、一応さような認定をすることが合理的であるというような事情のある場合」(同上)を意味する。

 以上のように、かなり具体的な根拠が必要であるという解釈になっている。

 旅券発給拒否が取り消された判決は<なお、同号該当性の判断について、被告にある程度の裁量が認められることは、同号の文言からも明らかであるが、同号の規定が憲法二二条二項によつて保障された海外渡航の自由を制約するものであることに鑑み被告の裁量権はそれほど広いものではなく、少なくとも、被告の判断の基礎となる重要な事実の存否につき裁判所の審査が及ぶことはいうまでもない>と述べている。7号による旅券拒否はかなり慎重に行わなければならず、裁判所の要求に耐えられるだけの事実の提示が求められることになる。

 私の旅券発給申請が「審査中」のまま保留になっていることについて、ネットなどで「当然だ」という主張が出ている。その根拠は、シリアで人質にされていたことについて、「あれだけ迷惑をかけたのだから」というものだが、「あれだけ」が具体的に「どれだけ」なのかは、全て憶測によるものでしかない。

 そうした過去の出来事をもとに「著しく」「直接に」「相当の理由がある」ことを、「単なる風説等ではなく諸種の具体的資料を総合」して、「何人が考えても、一応さような認定をすることが合理的であるというような事情のある場合」に当てはめることができるのだろうか。

 また、過去の出来事をもとに旅券発給拒否をする場合、世界中どこにも行ってはいけない「出国禁止の刑」という量刑に値するだけの「罪状」があったのかどうか、具体的な根拠を示さなければならないことになるのではないか。

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筆者

安田純平

安田純平(やすだ・じゅんぺい) フリージャーナリスト

1974年、埼玉県出身。一橋大学社会学部卒業後、信濃毎日新聞に入社。行政や医療、登山や自然環境について記事を書く。在職中にアフガニスタンやイラクを取材。2003 年に退社しフリージャーナリストに。イラク、シリア、アフガニスタン、東南アジアなどの取材を行う。04年、イラクを取材中、現地人の自警団にスパイ容疑で拘束されるが何も要求がないまま3日後に解放。07-08年、民間人が戦争を支えている実態を取材するため、イラク軍関連施設などで料理人として働きながら取材し、「ルポ 戦場出稼ぎ労働者」(集英社新書)を著す。12 年、シリア内戦を取材し報道番組で発表。15 年6月にシリアで武装勢力に拘束され、18年10月、40カ月ぶりに解放された。近著に「シリア拘束 安田純平の40か月」(ハーバー・ビジネス・オンライン編/扶桑社)。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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