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選びたい人がいない 参院選挙の機能不全

国民が潜在的に持つ「選んでいない感」

井戸まさえ ジャーナリスト、元衆議院議員

拡大タレント候補に群がる有権者

 参議院選挙が目前となった。

 選挙区と比例代表の改選数124に対し、予定者数は340人前後、前回2016年参院選の立候補者数(389人)を下回る。この差は多様な背景、当事者性を持つ候補者が多く立候補する一方、1人区で野党共闘により候補者の一本化が図られた等によるものであろう。

 そもそも候補者にとって「選挙」で戦う相手は他陣営の候補だけではない。また選挙期間だけでもない。「政治活動」と称した実質選挙活動と見まがう街宣活動やポスター掲示は有権者にも見慣れた風景かもしれないが、実は選挙戦に入るまでに当落に影響が及ぶ選挙の「構図」を固めることが最も重要な作業なのだ。しかしその過程は有権者には知らされぬまま行われるのが通常だ。

 「選びたい人がいない」。地方選挙でも、首長、国政選挙でも、棄権する場合の理由は「適当な候補者がいなかったから」が3割を超え、「忙しかったから」とともに常に上位を占める。国民が潜在的に持つ「選んでいない感」はこうした政党内、政党間での「一次予選」に関与できないことと無関係ではない。選挙における低投票率と相関であり、民主主義の機能不全の側面であると指摘される。2019年参議院選挙で、この点はどう克服されるのであろうか。

タレント候補擁立の是非

 今回の参議院選挙に限らず、国政選挙となるとスポーツ選手やタレント候補擁立の是非が話題にのぼる。

 これまで政治経験はなく、その能力は未知数。社会活動等の実績も取り立ててない。しかし抜群の知名度があり、大勢の前で話すという訓練はされているから、街頭演説では人だかりができる。マスコミ対応等も含めて無難にこなし、大崩れがないという意味でも政党にとって魅力的な人材である。

 「政治の素人が何ができるのか」等の批判を浴びることは本人も党も覚悟の上であろう。選挙では「悪名は無名に勝る」のだ。少々のスキャンダルが出たとしても、注目されたらこっちのもの。日本国中が選挙区という参議院比例区においては一人でも多くの人の関心を喚起し、これまで投票に行っていなかった層の票を掘り起こすことができれば、大量得票につながる。

 政党がタレント候補等を擁立する理由は彼ら自身が候補者として全国津々浦々を回る際、地方の選挙区で戦う候補の街頭演説に弁士として登場することでの自然動員やインスタ等SNSでの拡散等の相乗効果を期待してのことだ。選挙区候補へのテコ入れという意味でも人寄せパンダ的に著名人に応援を頼むより、候補者として出てもらった方がスケジューリングも楽なのだ。

 またそこには現実的な話として金銭的計算もある。政党交付金の額は議員数割だけでなく、得票数割があるからだ。衆議院で一票約8円、参議院で約4円ともなれば、当選者はもとより落選者の得票も大事な収入源だ。こうしたことをトータルした上で判断が行われる。

 一方で、こうしたタレント候補を擁立することには批判も根強い。確かにスポーツ競技や芸能界で世界一、日本一を取った人物はそれなりの能力が備わっているだろうから、たとえ畑違いといえども政治の世界で活躍することも可能だという評価もある。ただ、国会議員としての基礎的な知識がなかったり、前述通り単に選挙応援部隊としての活動を期待されてであったならば、国民の貴重な税金で雇う必要があるのだろうかという疑問である。

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筆者

井戸まさえ

井戸まさえ(いど・まさえ) ジャーナリスト、元衆議院議員

1965年宮城県生まれ。ジャーナリスト。東京女子大学大学院博士後期課程在籍。 東洋経済新報社勤務を経て2005年より兵庫県議会議員。2009年、民主党から衆議院議員に初当選(当選1回)。著書に『無戸籍の日本人』『日本の無戸籍者』『 ドキュメント 候補者たちの闘争』、佐藤優との共著『不安な未来を生き抜く最強の子育て』など。