メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

news letter
RSS

無料

山本太郎は日本のバーニー・サンダースか

左派ポピュリズムと中道リベラルの「戦略的互恵関係」

大井赤亥 東京大学非常勤講師(政治学)

拡大前回大統領選でヒラリー氏の候補指名を決める民主党大会で演説するサンダース氏=2016年7月25日

サンダースとヒラリーの「目的」の違い

 そもそも、サンダースとヒラリーとでは大統領選に出馬した「目的」が異なる。サンダースの「目的」は民主党予備選で暴れてアメリカ政治のイデオロギー的座標軸それ自体を大胆に「左」に寄せることであり、これはある程度成功したといえる。他方、ヒラリーの「目的」は本選で勝つことであり、それはヒラリーのような候補者にとって、「目的」というよりむしろ「義務」であろう。アメリカ大統領は、本来、最低限ヒラリー程度の、穏健凡庸なリベラルで「なければならなかった」はずだ。

 同時に、日本の社会運動のなかには、急進的提案を大胆に提示したサンダースに飛びつき、ヒラリーを「ウォール街の代理人」としてこき下ろす向きもあったので、ここでは政治家サンダースがあわせもつ「現実主義」にも言及しておこう。すなわち、大統領選に際してサンダースは最終的にその「ウォール街の代理人」たるヒラリーへの支持表明を行ない、本選ではヒラリーに投票していることだ。左派ポピュリズムにもまた、右翼排外主義の前では敢然と中道リベラルに投票する政治判断の側面があることも想起されるべきであろう。

 2016年大統領選における左派ポピュリズムと中道リベラルとの緊張感をはらんだ共棲は、しかし、結果的に民主党の裾野を広げたといえる。ヒラリーはいう。「私は指名を受けた後、彼〔サンダース〕と協力して、大学の学費を安くする計画を立てた。予備選挙中のお互いの提案の、良い部分を組みあわせた計画だった。もし何かを実現させたかったら、こうした協調は政治には不可欠だ。私たちは協力して、記憶にある中で最も革新的な民主党政綱を書いた」(注6)。このような経験こそ、バイデンからオカシオ=コルテスまで、多様な人材が党内活力を生みだす現代のアメリカ民主党を生んだ背景であろう。

(注6)前掲書、264頁。

全ジャンルパックなら本の記事が読み放題。


筆者

大井赤亥

大井赤亥(おおい・あかい) 東京大学非常勤講師(政治学)

1980年、東京都生まれ、広島市育ち。東京大学大学院総合文化研究科博士課程単位取得退学。博士(学術)。現在、東京大学の他、法政大学、成城大学、昭和女子大学、東京理科大学で講師を務める。著書に『ハロルド・ラスキの政治学』(東京大学出版会)、共著書に『戦後思想の再審判』(法律文化社)など。

※プロフィールは、論座に執筆した当時のものです