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ネット活用の荒療治。中国でじわりと進む司法改革

裁判の一部始終を“ノーカット”で公開。「デタラメは許されない」の機運が……

姫田小夏 フリージャーナリスト

拡大vectopicta/shutterstock.com

法治ではなく人知の国・中国が……

 中国は「法治国家でなく人治国家だ」と言われる。労務紛争、売買契約、商標権侵害などをめぐり、日系を含む外資系企業が中国の裁判で勝てるのは「極めて稀」だと言われ続けてきた。泣き寝入りを余儀なくされた在中の日系企業も多かった。

 だが、そんな“司法の場”が変わりつつある。日系企業が最も頭を痛めてきた商標権の侵害もまた、「勝ち目がない」と言われてきた分野だが、勝てる企業が出始めているのだ。

 上海に工業部品の生産工場を持つある中小企業の経営者は、数年前の勝訴をこう振り返る。

 「商標権をめぐるトラブルは、国益が絡むので外資企業は勝ちにくいと言われてきましたが、当社は最後に勝訴しました。中国では社会全体に規範化を目指す機運が醸成されていますが、こうした流れの中での勝訴だと受け止めています。中国ではもはやでたらめは許されない、そんな世の中になりつつあることを感じています」

クリスチャンディオールが最高裁で勝訴

拡大中国では長期にわたって知的財産権の侵害が外資企業を悩ませてきた
 近年では2018年4月に、仏クリスチャンディオールの香水「ジャドール」の商標権をめぐる裁判が最高人民法院(日本の最高裁判所に相当)で行われ、内外からの高い注目を集めた。

 ディオール社はマドリッド協定議定書に基づき、商標権の国際登録を行い、世界知的所有権機関(WIPO)を通して、加盟国である中国に対しても保護申請を行っていた。しかし、2015年7月、国家工商行政管理総局商標評審委員会は、香水の瓶の特徴性の欠如を理由に商標申請を棄却する通知を出した。これを不服としたディオール社は、行政を相手取り訴訟を行ったが、一審、二審(中国では二審制だが、再審が適用されている)とも敗訴した。

 ディオール社は、当該香水瓶はすでに中国市場でも広く宣伝され、使用されており、多くの国で商標登録されていると主張し、これを最高裁に持ち込んだ。

 結果は、ディオール社の逆転勝訴となった。最高裁は、「ディオール社が異議を申し立てているにも関わらず、是正を行わないそのやり方は、行政に対する合理的な期待を損ない、かつ行政手続きの正当性の原則に反する」とし、一審二審の判決を退けた。

 裁判が行われた2018年4月26日は、WIPOが定める「世界知的所有権の日」で、多くのメディアが現場から中継放送し、6000万人の国民がこれを見守った。この判決は、中国が国際ルールに則り、履行の義務を果たす道を選んだことを象徴するものとなった。

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筆者

姫田小夏

姫田小夏(ひめだ・こなつ) フリージャーナリスト

東京都出身。アジア・ビズ・フォーラム主宰。上海財経大学公共経済管理学院・行政管理学修士(MPA)。中国ウォッチは25年超、うち約15年を上海で過ごす。1998年末に上海で、2002年には北京で、日本人向けビジネス情報誌を創刊し、10年にわたり同誌編集長を務める。2008年春に退任後、中国とアジアを追うフリージャーナリストとして活動を開始。2014年以降は東京を拠点に内外を現地取材、中国が遂げる変革の行方、インバウンドがもたらす日本の変化、アジアにおける中国の影響をローアングルで追っている。著書に『インバウンドの罠』(時事通信出版局)ほか、長期連載にダイヤモンドオンライン『チャイナレポート』など。

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