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三浦瑠麗対談:私が徴兵制が再び必要だと言う理由

阿川尚之氏と語り合ったポスト「アメリカの世紀」の平和創出理論

三浦瑠麗 阿川尚之

市民が戦う伝統が生きているアメリカ

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――阿川さんが詳しいアメリカは日本と対照的に戦争がリアルですね。

阿川 そうですね。私自身、湾岸戦争のときはアメリカに住み、9・11同時多発テロはワシントンの空港で乗り換え中に、イラク開戦は勤めていた在米大使館へ夜中に呼び出されて知りました。

 アメリカは人々が戦いを通じて築いてきた国です。たとえばヴァージニアの古都ウィリアムズバーグには、広場の真ん中に武器庫がある。外部からの攻撃があると、各市民が急いでそこから武器を取ってきて戦う。共同体は自分たちで守るという伝統の現れです。
憲法を制定し合衆国をつくるときには、この伝統に反し、連邦政府の圧政につながりかねない連邦政府の常備軍創設への強い抵抗と反対がありました。その結果、有事には各州の民兵が連邦軍に編入され戦うという規定が憲法に設けられます。

 本格的な徴兵制度は、第1次世界大戦以後です。現在でも、例えばイラク戦争では州軍兵士が動員され多くの戦死者が出ましたが、それでもなお市民自らが戦う植民地時代以来の伝統は生きています。

「戦争のコスト」を認識し平和な判断を下す

――そもそも三浦さんは徴兵制について、どう考えているのでしょうか。

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三浦 本来、軍人というのは、技術的に安全保障に長けたプロで、それに応じた社会的地位や給料を得られるべき存在です。ただ、今は必ずしもそうではない。むしろ、地方の貧しい若者が勧誘されているという見方が大半です。気を付けなければならないのは、弱者の味方であるべき左翼陣営から軍は他に行き場のなかった可哀そうな人として見られているが、それは違うということです。アメリカでは軍人の出身階層は中産階級です。肥満、薬物汚染問題や犯罪歴がなく、知力・体力ともに高い基準を満たす合格者は、貧困層からはなかなか出てこないからです。歴史的にも、マイノリティの地位向上に大きな役割を果たしてきました。

 ですが、社会の側にはどこか軍人への蔑視があり、いざというときには元を取ろうとする傾向があります。アメリカでは志願制に移行してのち、湾岸戦争以降、今まで金を払い続けてきたのだから、軍人は戦うのが当たり前という風潮が強まった。民主主義の欠陥だと思います。

 朝鮮戦争後、アメリカは規模の大きな常備軍を維持する方向に舵(かじ)を切りました。しかし、近年ますます少数の軍人に負担を押し付ける傾向が強まっています。先ほど阿川さんが言及されたように、イラクでは予備役の人を大量に戦地に送り出し、多くの人が死んだ。同じ人が何度も戦場に送り返される事態も生じています。異論・反論が許されていない「一部の人」にそこまでの負担を押し付け続けるのは、やはり民主的な政府のやるべきこととは思われない。

 プロの軍隊はリスペクトされるべきだが、彼らだけに負担を押し付けず、多くの人びとが「戦争のコスト」を認識して平和的な判断を下すためにも、徴兵制が必要である、と考えたのです。

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