メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

news letter
RSS

欧州議会選、デモクラシーの「代償」と統合の復権

「知のポピュリズム」、もうひとつのデモクラシーの危機

渡邊啓貴 帝京大学教授(ヨーロッパ政治外交、国際関係論) 

反EUポピュリスト、頭打ち

 今回の欧州議会選挙は一口で言うと、反EUポピュリズムの伸びは頭打ちとなり、その勢力内部では摩擦が明らかとなった。また既存のEU支持大政党の後退は顕著だったが、それに代わって環境派や中道リベラル民主派という統合支持両勢力が伸長したため、勢力関係は分散化した。しかし他方で4半世紀ぶりに投票率が過半数を回復し、51%に達したことはEU加盟国有権者の関心の高まりを意味し、それは統合デモクラシーの機運が高揚した表れでもあった。ポピュリズム勢力の安定化には警戒が必要だが、今回の選挙は決して欧州統合の後退ではなかったし、二極分化でもなかった。むしろ民主的な統合プロセスの一局面としてポジティブな視点からとらえることができるのである。

新しい欧州議会の勢力分布

 まず欧州議会選挙の結果を冷静に見てみよう。欧州議会の勢力は、総数751議席を人口比で加盟各国に割り当てた議席数を比例代表選挙の投票率に応じて配分する。さらにそれぞれの国では政党名や支持母体は異なるので、欧州議会では近しい政党が集まって会派を形成する。したがって、それぞれの会派の議席数には動きがあるが、ようやく大体のところが固まった6月の最新情報は下記の通りだ。

拡大欧州議会の会派別議席数 GUE/NGL(欧州左翼統合・北欧緑連盟) S&D(社会・民主主義同盟) Greens/EFA(環境保護派「緑」) Renew Europe(再新欧州派) EPP(欧州人民党派・キリスト教民主派) ECR(欧州保守・改革派) EFDD(自由と欧州直接民主主義の欧州派) ID(アイデンティティー・民主派) NI(無所属) ID ・ECR・ EFDDは反EUポピュリズム派 6月20日の最終統計

 この図表で一目瞭然だ。まず、反EUポピュリストは全体の約4分の1以下の議席(179議席)にとどまった。一定の存在感を示す数字であるが、実はすでに前回2014年の選挙で欧州統合に懐疑的な勢力と極右政党の議席はそれまでの2倍以上の140議席台へと増大していた。反EUポピュリズムの勢力の基盤が安定したといえるが、予想ほどではなかった。イタリアの「同盟」とフランスの「国民連合RN」が国内で第一党となり、英国ブレクジット(英国の離脱)党も躍進したが、RNは前回国民戦線FN時代にも第一党であった。むしろ今回は議席を2議席減らしたというのが実情だ。

全ジャンルパックなら本の記事が読み放題。


筆者

渡邊啓貴

渡邊啓貴(わたなべ・ひろたか) 帝京大学教授(ヨーロッパ政治外交、国際関係論) 

1954年生。東京外国語大学卒業、慶応義塾大学・パリ第1大学大学院博士課程修了、高等研究大学院客員教授(パリ)、リヨン高等師範大学校、ジョージ・ワシントン大学シグール研究センター客員教授、在仏日本国大使館公使、雑誌『外交』『Cahiers du Japon』編集委員長などをへて現職。『ミッテラン時代のフランス』芦書房、『ポスト帝国』駿河台出版、『米欧同盟の協調と対立』有斐閣、『フランスの文化外交戦略に学ぶ』大修館、『シャルル・ドゴール』慶応大学出版会、『現代フランス』岩波書店など。

渡邊啓貴の記事

もっと見る