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欧州議会選、デモクラシーの「代償」と統合の復権

「知のポピュリズム」、もうひとつのデモクラシーの危機

渡邊啓貴 帝京大学教授(ヨーロッパ政治外交、国際関係論) 

拡大選挙結果が伝わり、笑顔で勝利宣言する仏国民連合のルペン党首=5月26日、パリ

EU新幹部の人選合意

 7月2日、EU首脳会議は、秋に任期切れとなるEU幹部の人選で合意した。EUの首相ともいうべき欧州委員長と欧州中央銀行(ECB)総裁にはフォンデアライエン独国防相と国際通貨基金(IMF)のラガルド専務理事(仏元財務大臣)の両女史、EU大統領(欧州理事会常任議長)にベルギーのミシェル首相、EU外相(外交安全保障上級代表)にスペインのボレル外相を選出した。欧州議会議長は3日に欧州議会でブルガリア出身のセルゲイ・スタニシェフ氏を選出した。

 いつものように今回の主要幹部の人事では独仏EUの大国を中心とする権謀術数が展開された。欧州委員長には当初ドイツ出身のマンフレート・ウェーバー氏が有力候補に挙がっていたが、マクロン仏大統領が猛反発、最終的に独仏が欧州委員長と欧州中央銀行のポストを分け合った。フォンデアライエン新委員長はメルケル独首相に極めて近く、ラガルディ新総裁はIMFでの高い評価を買われてのことだった。欧州委員長もECB総裁も女性が就任するのは初めて。トゥスク現EU大統領は、「ヨーロッパの語源である『ユーロぺ』は女性の名前(「大洋神オケアノスの娘」)」と持ち上げた。両氏に対する期待度は高い。

 しかし一連の人選をめぐる攻防には反EUポピュリスト勢力の影はなかった。むしろ従来の構図である大国と小国との確執が再確認されたというのが実情だった。なぜ、そうなったのか。情報の早い今日、すでに旧聞に属することかもしれないが、あらためて5月下旬に行われた欧州議会選挙の結果を省みながら、論じてみたい。

 日本ではこの選挙の結果はポピュリズム台頭と欧州危機と一般には解釈された。欧州でも事前にポピュリストの大躍進を予想するメディアが多かったので、その流れでの風潮だった。

 しかしそれは事実ではなかった。なぜなら反EUポピュリズム勢力は伸び悩んだからである。下馬評のような彼らの地滑り的勝利はなかった。したがって今回の選挙でポピュリストが台頭して欧州統合派と反EUポピュリズム派の二項対立の構図が出来上がったということもなかった。

 そうしたEU統合の危機をひとまず切り抜けたというのが欧州識者の読みである。

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筆者

渡邊啓貴

渡邊啓貴(わたなべ・ひろたか) 帝京大学教授(ヨーロッパ政治外交、国際関係論) 

1954年生。東京外国語大学卒業、慶応義塾大学・パリ第1大学大学院博士課程修了、高等研究大学院客員教授(パリ)、リヨン高等師範大学校、ジョージ・ワシントン大学シグール研究センター客員教授、在仏日本国大使館公使、雑誌『外交』『Cahiers du Japon』編集委員長などをへて現職。『ミッテラン時代のフランス』芦書房、『ポスト帝国』駿河台出版、『米欧同盟の協調と対立』有斐閣、『フランスの文化外交戦略に学ぶ』大修館、『シャルル・ドゴール』慶応大学出版会、『現代フランス』岩波書店など。

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