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アフリカ野球の代表監督を経験して得た大切なこと

野球人、アフリカをゆく(7)ガーナで学んだリーダーのあり方、難民の深刻さ

友成晋也 認定NPO法人アフリカ野球友の会 代表理事

多くの学びと気づきがあった監督生活

 それまで野球にプレーヤーとしてしか取り組んでこなかった私が、思ってもみなかった「監督」の立場で初めて野球に向き合った。確かにレベルは低いが、ナショナルチームなので、目指すのはオリンピック。夢の大きさは途方もなくデカい。ガーナに野球を根づかそうと、ほぼ3年間、JICAの事務所員としての仕事の傍ら、プライベートタイムをつぎ込み、全身全霊で監督業に取り組んだ。

拡大100本ノックを受ける選手たち ガタイはいいが、実力は中学生レベル。初めての特訓に真剣に向き合う選手たち。 (©橋本和典)
 異国の地、ガーナでの監督生活は、野球の見方、考え方、取り組み方について、大きな気づきと多くの学びを与えてくれた。野球の奥深さ、難しさ、そして可能性を、ガーナで見い出した。組織マネジメントやリーダーシップのあり方も考えるようになった。監督として野球の新たな魅力を見出した私にとって、野球の持つ可能性に確信を持った3年間だったと言える。ガーナでの経験は、私の中にある野球を、「楽しく、かつ苦しい存在」から「愛しい存在」へと昇華させたのだった。

 その過程は、拙著『アフリカと白球』(文芸社)に詳しいので、ご覧いただければ幸いだ。

 ガーナでの監督業を通じて得た野球人としての学びを、帰国後、私は仕事にも活かした。そして、学びのひとつは、南スーダン野球にもつながっている。

「リーダーは父親たれ」

 それは、ガーナ代表チームの監督として1年半ほどが経ったときの出来事だった。

 その頃、私と選手たちとの間には、溝ができていた。私の選手たちへの接し方、ものの言い方、判断などが、選手たちに受け入れらなかったからだ。

 日本の野球チームの監督は、選手との間に公平性を保つために、あまり親しくせず、一定の距離を置くことが多い。少なくとも私が現役時代に師事した監督は、みなそうだった。子は親を見て育つではないが、自分も自然とそのように接していた。

 しかし、同じ日本人同士ならいざ知らず、日本人監督とガーナ人選手である。言語、宗教、習慣、育ってきた社会環境など、まさに異文化交流だ。同じ単語を使っていても、意味するところが違うのは日常茶飯事。そこに日本式の監督と選手のあり方を持ち込めば、軋轢(あつれき)が生じるのは至極当然だった。

拡大ガーナ監督時代 監督と選手たちとの間でできた軋轢を乗り越え、一体感のあるチームになった。ナイジェリアとの国際試合で盛り上がるベンチの様子。
 若かった私には、状況を俯瞰(ふかん)する力はなかった。トモナリ監督にはついていけないという声が大きくなり、チームを掌握できなくなった私は監督辞任を決意する。

 だが、ナショナルチームの主将だったアルバート・フリンポンが私を諭した。誰もトモナリ監督にやめてほしいとは思っていない。でも、もっと選手たちのことを理解してほしい、という。

 「ガーナでは、リーダーは父親たれ、という言葉があります。メンバーのことを誰よりもよく知っていることがリーダーに求められるのです」

 この言葉にハッとさせられた。それまで、自分の日本での経験則に基づいて監督をやってきたが、ガーナにはガーナの監督の在り方があるのだと気づいたのだ。

 それをきっかけに、私は選手たちの家庭訪問を始めた。時には職場訪問もした。彼らが普段、どんな生活をし、どんな環境で育ち、どんな人たちに囲まれて生活しているのか。実際に自分の目で見て、家族から直接話を聞いて、時には、彼らの職場のボスにまで面会しに行った。

 その結果、選手たちとの距離が縮まり、信頼関係が回復し、さらに強固になって、チームの結束力が格段に高まったのである。

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筆者

友成晋也

友成晋也(ともなり・しんや) 認定NPO法人アフリカ野球友の会 代表理事

中学、高校、大学と野球一筋。慶應義塾大学卒業後、リクルートコスモス社勤務を経てJICA(独立行政法人国際協力機構)に転職。1996年からのJICAガーナ事務所在勤時代に、仕事の傍らガーナ野球代表チーム監督に就任し、オリンピックを目指す。帰国後、2003年にNPO法人アフリカ野球友の会を立ち上げ、以来17年にわたり野球を通じた国際交流、協力をアフリカ8か国で展開。2014年には、タンザニアで二度目の代表監督に就任。2018年からJICA南スーダン事務所に勤務の傍ら、青少年野球チームを立ち上げ、指導を行っている。著書に『アフリカと白球』(文芸社)。

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