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亥年選挙の年に大阪で思う(後編)

大阪市議選にかかわって気づいた「大阪の教育」の危うさ

岩城あすか 情報誌「イマージュ」編集委員

管理者目線の教育が子どもをゆがめる

 勉強会では「『おれ頭悪いから、明日のテスト休もうかな』と話した生徒に、教室中から拍手がわきおこった」とか、「成績が悪い生徒に、『明日休んで良いよ』と先生が声掛けしていた」など、学校現場にあるまじきエピソードが伝えられた。

 子どもの学力を、年1回の、しかも外部の民間業者に委託したテストに大きくウェイトをかけて測る現在のやり方は、監理する側からは好ましいのかもしれないが、生徒の側からみると、まったく教育的効果がないのではないか。

 以前の入試制度であれば、体育や音楽の成績が抜きん出ていたり、まじめにコツコツ提出物を準備した生徒も、高い内申点を得られる可能性があったが、あまりにも5教科テストのウェイトが大きくなっている。

 学力テスト偏重主義の傾向は、大阪府内の進学実績上位10位校を「グローバルリーダーズハイスクール(GLHSと略されている)」に認定し、予算を多く配分して大学受験まっしぐらのカリキュラムを組む教育にも反映されている。学校現場に多様性が失われ、勉強だけできる生徒だけを集めても、これからの社会を生きる力は養われないと思う。

 大阪の教育現場の姿を知ってショックを受けた私は、いろいろなところで友人たちにこの話をしてみた。教育関係に詳しい彼女/彼らはこのシステムをよく知っていて、「なんで大阪だけそんな変なやり方をするのかと、他の地域からはあきれられてるよ」と言う。大阪の“ガラパゴス化”を痛感した。

「強い政治」は人を幸せにできるか?

 他にも「府市の二重行政を解消する」という名分で「住吉市民病院」が閉鎖されたが、そもそもきちんと役割分担をしていたので二重行政になっていなかったという指摘もある。「2つあるものは1つにすれば無駄がなくなる」という単純な発想で府大と市大の統合が進められるなど、対話無視の強硬策ばかりが大阪では目につく。

 2018年4月に民営化された「大阪メトロ」では、津波浸水対策工事の予算を削りつつ「増収増益」を誇っているが、いざというときどう責任を取るのだろう。

 また、近年の失業率の低下も喧伝されているが、より大事なのは「雇用の質」だ。

 たとえ就職できたとしても、非正規で最低賃金すれすれの長時間労働、労基法違反やパワハラなどが横行すれば、生活の質は悪化する。建築業界や施設管理などの業界では、大幅な価格破壊を繰り返した入札が相次ぎ、深刻な人手不足に陥っている。大阪では身動きが取れなくなったので、ある建築関連の企業が関東方面へ進出しようとすると、「大阪の企業は相場を破壊するから出入り禁止」と締め出しをくらっているとも聞いた。

 安易な民営化と価格だけを重視した入札の実施。「今だけ、金だけ、自分だけ」の、浅はかで持続可能性のない政策の悲惨な末路のあおりを食うのは、私たち住民だ。

 政治の役割は、税や予算の分配で、弱いものがより弱いものを抑圧する、グローバル資本主義の弊害を少しでも軽くすることだ。うわべだけの「効率」や「生産性」を重視するやり方では、超高齢化社会のなかで、ますます社会不安は増大する。

 「身を切る改革」よりも大切なのは、「対話」を通して「あるものを活かしないものを創る(by世田谷区長の保坂展人さん)」こと。少なくなり続けるパイを競争して奪い合うのではなく、あるものを少しずつ分け合って新しい関係性を築いていくパラダイムシフトが望まれている。

拡大劇団「態変」の最新作「箱庭弁当」のワンシーン。子どもが食べずに廃棄した弁当のおかずたちがごみ箱から逃げ出し、助けを得ながら冒険するファンタジーだ。2019年6月、伊丹アイホールにて。撮影:bozzo

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筆者

岩城あすか

岩城あすか(いわき・あすか) 情報誌「イマージュ」編集委員

大阪外国語大学でトルコ語を学んだ後、トルコ共和国イスタンブール大学(院)に留学(1997年~2001年)。通訳やマスコミのコーディネーターをしながら、1999年におきた「トルコ北西部地震」の復興支援事業にもボランティアとして関わる。現在は(公財)箕面市国際交流協会で地域の国際化を促す様々な事業に取り組むほか、重度の障碍者のみで構成される劇団「態変」の発行する情報誌「イマージュ」(年3回発行)の編集にも携わっている。箕面市立多文化交流センター館長。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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