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亥年選挙の年に大阪で思う(後編)

大阪市議選にかかわって気づいた「大阪の教育」の危うさ

岩城あすか 情報誌「イマージュ」編集委員

生産性でひとを測るな!~イノベーションのヒントは脱優生思想

 日本社会は、成長期をとっくに終え、長い成熟期に入っている。しかしながら、いまの政治は、スカイツリーにオリンピック、万博まで招致するなど、いまだに発展途上型の経済成長を夢見ているようだ。

 今後日本がイノベーションをおこすなら、世界の最先端を行く超高齢化社会を迎える中で、今まで培われてきた社会資源をシェアしながら「生き合う」システムづくりとノウハウを売りにするしかないと思う。

 「生産性」でひとを分断、競争させ、排除をあおる図式には一切のらず、ベーシックインカムも試したらよい。少なくともいまの政治が変われば、もうちょっとましな社会になると思うが、私たちがこの悪循環から抜け出せる道をみつけるのが先か、もろとも崩壊するのが先か。まさに瀬戸際だ。

 この4月から、入管法改正に伴い、入管庁に初めて外国人受け入れに関する担当部局が置かれ、全国で13名(少ない!)の専門官が配置された。一方で、同じ組織の茨城県牛久市にある東日本入国管理センターでは、27人がハンスト中だ(ロイター記事)。6月には長崎県の大村入国管理センターでハンストをしていたナイジェリア出身の男性が死亡したという(毎日新聞記事)。

 かつて大阪府茨木市に西日本入国管理センターがあった頃、UNHCRの職員とともに、被収容者のクルド人男性の面会通訳をしたことがある。仮放免で1か月に1回出頭する生活が何か月も続いていたが、ある日出頭したら、なぜか即再収監されることになった。ちょうど妻が来日したばかりで、施設内のロビーで待たせていたため、「せめて彼女に収監されたことを伝えさせてほしい」と言ったが、一切取り合ってくれなかったという。日本語がまったく通じず、一人でバスや電車にも乗れなかった彼女は、閉館まで何時間もひとり待ち続けたそうだ。名古屋や大村、西日本の各施設でどのような暴力を受け、いじめにあったのかも聞いた。

拡大在留資格のない外国人らが収容されている東日本入国管理センター=茨城県牛久市

 長期収容や虐待がまん延している状況は、現在も一切変わっていないようだ(むしろ悪化しているのではないか)。オリンピックで「おもてなし」に力を入れようとする一方で、外国人との共生を図るための総合的対応策の総額(150億円)以上の「不法滞在者への対策費(157億円)」が今年度は予算計上されている。やはり、同じ組織で「受け入れ」と「取り締まり」という、相反する業務を担うのには無理があるのではないか。

 オーバーステイになったからといって、非人間的な仕打ちをして良いはずなどない。技能実習生も、著しく尊厳を奪われている状況が改善されないまま、新たに「特定技能」の外国人労働者を働かせようとしている。同じ人間なのに、国籍や障碍の有無、性別や働き方などで線を引き、優劣をつけることがまかり通る社会は異常だ。

 7月26日で、相模原の障碍者大虐殺事件から3年を迎える(『相模原障碍者大虐殺事件 劇団態変の闘い』)。原発事故で「底が抜けた」と思っていたが、さらなる奈落に私たちは落ちてしまった。「家族の意向」という理由で、殺された19人の名前はいまだ公表されないままだ。

 昨年は三田市で重度の知的障害がある長男を25年以上監禁していた事件が発覚。今年は川崎市登戸の児童殺傷事件や、練馬区で父親が息子を刺殺する事件もおこったが、すべて7.26の延長線上にあると感じている。世界でも類をみない凶行を、このまま風化させてはいけない。

 7月26日の夕方は、大阪で毎年有志による「相模原追悼アクション」がおこなわれるので、大阪近辺の方はぜひ参集いただきたい。(18時から、梅田ヨドバシカメラ前で開始、献花台も設ける予定。その後19時半にはHEP FIVE前でアクションもする)

拡大写真は2018年7月26日の追悼アクションの様子(写真提供:TETSUYA FUCHIGAMI)。神戸でも、「リメンバー 7.26 神戸アクション」の呼びかけによる追悼デモが行われる。(午後4時 西元町きらら広場集合→4時15分 デモ出発→5時45分 三宮東遊園地到着→6時 解散)http://u0u0.net/RYdN(障碍者を殺すな7.28追悼デモ)


筆者

岩城あすか

岩城あすか(いわき・あすか) 情報誌「イマージュ」編集委員

大阪外国語大学でトルコ語を学んだ後、トルコ共和国イスタンブール大学(院)に留学(1997年~2001年)。通訳やマスコミのコーディネーターをしながら、1999年におきた「トルコ北西部地震」の復興支援事業にもボランティアとして関わる。現在は(公財)箕面市国際交流協会で地域の国際化を促す様々な事業に取り組むほか、重度の障碍者のみで構成される劇団「態変」の発行する情報誌「イマージュ」(年3回発行)の編集にも携わっている。箕面市立多文化交流センター館長。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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