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経済再建の立役者を葬り去ったギリシャ国民の民意

花田吉隆 元防衛大学校教授

拡大総選挙期間中の集会でシリザの候補者(右奥)が現政権の実績を支持者にアピールした=アテネ、河原田慎一撮影

 7月7日に行われたギリシャ総選挙の結果、これまでのアレクシス・チプラス首相率いる急進左派連合(SYRIZA)が下野、新たに中道右派の新民主主義党(ND)が政権に就いた。ギリシャと言えば、あの2009年、当時のパパンドレウ政権による前政権NDの財政赤字隠蔽公表を機に、欧州をユーロ危機の大混乱に陥れた国。チプラス首相は債権団が要求する緊縮政策への反対を掲げて選挙に勝利しながら、いざ政権に就くと国民投票を経て方針を180度転換、債権団の要求に沿った緊縮政策の実施に踏み切った。その後経済は緩やかに回復。しかし、公約破りのツケは大きく、国民はチプラス首相に明確なノーを突きつけた。新たに政権の座に就くNDは2009年の赤字隠蔽の張本人である。口当たりのいい公約を発表し選挙に勝利したが、財源をいかに工面していくか、国民は悠長に待ってはくれまい。

欧州議会選の敗北で早まった総選挙の日程

 元来、総選挙は10月の予定だった。しかし、5月末の欧州議会選挙でSYRIZAがNDに10ポイントも差をつけられ大敗。チプラス首相は急きょ、予定を前倒しし、前例のない酷暑の中での総選挙に踏み切った。低い投票率は自らに有利と踏んでの賭けだったが、チプラス首相に勝機があったわけではない。「名誉ある敗北」が選挙の目標とされた。そしてそれは達成された。SYRIZAとNDの差は大きく縮まり、「25%は上回りたい」とのチプラス首相の願いは達成された。得票率はND39.85%、SYRIZA31.53%。第一党は50議席上澄みされるギリシャ選挙制度により、総員300名中、NDは158議席を獲得。与党が単独で過半数を獲得するのはユーロ危機以降初めてである。SYRIZAは86議席にとどまった。投票率はギリシャの水準からすれば低い58%となり、前回に比べ6ポイントも下げた。

 ギリシャは1974年の民主化以来、左のパパンドレウ家と右のカラマンリス家、ミツォタキス家の3家で政権を代わる代わる切り盛りしてきた。新たに首相に就任したキリアコス・ミツォタキス氏は大叔父と父が首相、姉が外相という政治の名門の出だ。その意味で今回、ギリシャは「ノーマルな状態」に復帰したということなのかもしれない。それはとりもなおさずユーロ危機以来続いてきた「異常な状態」が終わったことを意味する。しかし、その異常な状態に終止符を打った功労者は他でもないチプラス前首相だった。

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筆者

花田吉隆

花田吉隆(はなだ・よしたか) 元防衛大学校教授

1953年生まれ。在スイス大使館公使、在フランクフルト総領事、在東ティモール特命全権大使、防衛大学校教授等を経て、現在、早稲田大学非常勤講師。著書に「東ティモールの成功と国造りの課題」(創成社)「スイスが問う明日の日本」(刀水書房)等。

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