メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

news letter
RSS

無料

『風をつかまえた少年』が8年間ぶれなかったわけ

英語の教科書にも出てくる原作者。14歳の少年なぜイノベーションを起こせたのか?

岩崎賢一 朝日新聞社 メディアデザインセンター エディター兼プランナー

1日1食しか食べさせられないという親の気持ちの切なさ

――映画では、干ばつで政府が住民に売り渡す穀物さえ足りず、多くの人が亡くなり、村を人が去っていくシーンがありました。この映画は、カムクワンバさんが経験したことにもとづいて作られています。その当時、その場にいた当事者として、そのときどのようなことを感じていたのか教えてください。

 いいときには普通に朝昼晩に3食を食べていましたが、それを1日1食にしなくてはいけないということを親が決めなくてはいけないという姿が忘れられません。1食でも量が少ない。そういうことを子どもたちに言わなくてはいけない親の姿に気持ちを揺さぶられました。

母が言った「私たちがなぜここまで苦しまなければいけないの」

――映画では、父親が大統領派の支持者の様子を見て、「民主主義は輸入した野菜と同じだ。すぐ腐る」と言っています。後半には、母親が「いつになれば失うことがなくなるの?」と涙を流しながら訴えています。父親や母親が実際にそのような言葉を言っていたのでしょうか。また、風車作りより畑を耕せと言っていた父親を許せた理由を教えてください。

 ハハハハハハ。父親役の俳優が言った言葉は、そのときあった出来事を表現するためのセリフなので……。実際に起こったことだけど、映画は映画だからね……。母親のセリフも、日常的に私が聞いていた「なぜ私たちにこんなことが起きているのか」「私たちがなぜここまで苦しまなければいけないの」という言葉が、映画ではああいう表現になりました。

 (お父さんを許すということについては)もともと勉強については学校に行って勉強をし続けて欲しいと思っていました。ただ、休みの時は畑を手伝いなさいといつも言っていました。風車が出来たのは、父親の自転車を解体して部品として使ったからですが、マラウイの人たちにとって、自転車は一番の移動手段であり、物を運ぶ手段でもあります。息子がやろうとしている未知のことに自分の自転車をすぐ渡せるかと言ったら、普通は悩んでしまうでしょう。失敗したら移動手段を失ってしまうだけですから。だから、私も、父親がすぐに自転車を渡してくれない理由をわかっていたので、フラストレーションはありましたが、許すも許さないもないという感じでした。

風をつかまえた少年拡大『風をつかまえた少年』 8月2日(金)ヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館他全国順次公開 © 2018 BOY WHO LTD / BRITISH BROADCASTING CORPORATION / THE BRITISH FILM INSTITUTE / PARTICIPANT MEDIA, LLC 【配給】ロングライド

自国のリーダーに対する怒りの方が多かった

――2009年、支援者からの奨学金を得て南アフリカにあるアフリカン・リーダーシップアカデミーに通い、その後、アメリカのダートマス大学で学んでいます。南アフリカやアメリカに初めて行ったとき、南アフリカでのちょっとのことやアメリカでのちょっとのことが、マラウイでは多くの人を救うことにつながることがあると感じたと思います。逆に言うと、同じアフリカの中の南アフリカや援助国のアメリカは、何でもっと早く自分たちの生活環境の改善方法を教えてくれなかったんだという不条理さ、怒りを感じませんでしたか。

 怒りを感じることはなかったですね。むしろ自分たちの政治的リーダーに怒りを感じました。他人に助けてもらうのを待つのではなく、自分の問題なのだからまず自分がアクティブに問題解決のソリューションを見つけていかないといけないと考えてきました。だから風車を作ったんです。自ら何か努力をしていないと、他人は助けようと思わないはずです。だから、自国のリーダーに対する怒りの方が多かったですね。

全ジャンルパックなら本の記事が読み放題。


筆者

岩崎賢一

岩崎賢一(いわさき けんいち) 朝日新聞社 メディアデザインセンター エディター兼プランナー

1990年朝日新聞社入社。くらし編集部、政治部、社会部、生活部、医療グループ、科学医療部などで医療や暮らしを中心に様々なテーマを生活者の視点から取材。テレビ局ディレクター、アピタル編集、連載「患者を生きる」担当、オピニオン編集部「論座」編集を担当を経て、2020年4月からメディアデザインセンターのバーティカルメディア・エディター、2022年4月からweb「なかまぁる」編集部。『プロメテウスの罠~病院、奮戦す』『地域医療ビジョン/地域医療計画ガイドライン』(分担執筆)。 withnewsにも執筆中。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

岩崎賢一の記事

もっと見る