2019年07月22日
政府が7月1日に公表した韓国向けの輸出管理強化措置は、いわゆる「徴用工問題」に関する韓国の理不尽な対応の修正を促す目的で取られたことは、いくら日本政府がその関連を否定しても、明々白々である。
確かに経済産業省のプレスリリースは「日韓間の信頼が著しく損なわれた」ことが措置の理由と述べているだけで、信頼が損なわれた原因には言及していない。しかし、本件に関する国内および海外のメディアのほとんどが、この措置は「徴用工問題への報復」と報道した。
これに関して、3日に世耕経産大臣が、わざわざマスコミの理解を深めるためとしてツイッターで行った説明の中で、「旧朝鮮半島出身労働者問題について、G20までに満足する解決策が示されず、信頼関係が著しく損なわれたと言わざるを得ない」と明記した。ここに本音が出ていると言わざるを得ない。
その後、政府は一貫して、本件措置はいわゆる「徴用工問題」とは全く関係がなく、輸出管理に関して安全保障上の理由による例外としてWTO協定上も認められているものであり、何ら問題はないと説明している。
もし韓国が本件措置をWTOに提訴した場合、純粋に法的解釈からは、輸出管理の強化そのものについては日本の主張が認められる可能性は多分にある。
しかし、それにより、日本政府が真に目的とするところが達成するのであろうか?
今回の日本側の問題提起により、もし韓国の輸出管理の実態が抜本的に改善されるとしたら、それはそれとして望ましいことである。
しかしながら、日本が現在、韓国にもっとも望んでいることは、そのようなことではなく、日韓間の信頼関係を決定的に揺るがす原因となっている「徴用工問題」について、韓国が適切な対応を示してくれることではなかろうか。
この観点から考えると、遺憾ながら、今回の日本政府の取った措置は意味のあるものとは言い難い。
すなわち、日本側が輸出管理の強化は「徴用工問題」とは一切無関係と主張すれば主張するほど、措置の妥当性がWTOなどによりどう判断されても、それに応じて韓国が取る対応は、自国の輸出管理面における対応にしかならないのである。
私が勝手に忖度するに、日本政府は、今回の輸出管理強化措置により、韓国がその経済的打撃に耐えかねて、「徴用工問題」に関して妥協的姿勢を示し、二国間協議や第三者による仲裁に応じてくることを想定しているのではないかと思う。
私は輸出管理にも韓国経済にも素人なので、韓国側の受ける経済的打撃の度合いやそれに応じた韓国国内の世論についての予測はできない。しかし、容易に想像できることは、ポピュリズムが支配する現在の韓国政権が、輸出管理の議論の結果を受けて「徴用工問題」で譲歩することは通常はあり得ないことである。
万が一韓国がその問題で譲歩せざるを得ないほど輸出管理強化の効果が出ることがあれば、それは韓国の国内経済だけではなく、半導体などの重要分野のサプライチェーンを含む世界経済に多大な混乱と障害を生じるような場合に限られると判断される。
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