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選挙は「オワコン」なのか

投票箱が閉まるまで 候補者と有権者の闘争

井戸まさえ ジャーナリスト、元衆議院議員

拡大衆参同日選挙中に急死、入院先の病院から自宅に向かう大平首相の遺体。苦戦を伝えられていた自民党は圧勝した=1980年6月12日

選挙最終盤、候補者たちは何を考えているのか

 参議院選挙の投票日まで残り2日となった。

 報道機関の事前調査の数字が良く、それなりの手応えを感じている候補者は「このまま、何事もなく投票日を迎えられますように」と、選挙の残り時間を幾度も確認しながら時計が早回りしてでも投票箱が早く閉まらないかなと念じている。選挙戦の残り時間が少なくなるのと交代に、参議院議員としての自分の誕生が近づいてくる。気を抜いてはいけないとしながらも、陣営も含めて「消化試合」的感覚でもあるのだ。

 一方で、情勢が悪い候補者は心のどこかで相手候補や党幹部が失言でもして「奇跡の大逆転」が起こらないか、起こってほしい、いや起こるかもしれないと半ば真剣に思っている。泡沫と位置付けられる候補者も、立候補届けが受理された段階で当選確率はゼロではない。当選者が決まってからでも、選挙違反や死亡等の理由で3ヶ月以内は繰り上げ当選もあり得るのだ。

 いずれにせよ、最終日近くの候補者は「神頼み」的心境となることの背景にはそれなりの理由がある。「当選」「落選」は候補者の努力と必ずしも比例しないことも、また選挙は最後まで「確実」ではないことを、候補者たちは自身の、もしくは周囲の選挙で見聞きしてきた経験上十分にわかっているからである。

 実際、それまで優勢に選挙戦を戦っていた政党の候補が、党幹部の失言等で一変して窮地に立たされたことはままある。一番劇的だったのは今からさかのぼること1980年、自民党の党内抗争から内閣不信任決議案が可決。窮地に立たされた当時の大平正芳総理が衆参同日選挙を断行した。厳しい結果が予想されていたが、大平総理は選挙期間中に急死。「葬い選挙」となり、状況は一変、自民党は圧勝した。どんな選挙でも、最後まで何が起こるかわからない、というのはその通りだ。

 ただ、毎回そうしたハプニングが起こるかといえばそうではない。大抵の場合は多少の波風は起こりつつも、全体を通してみれば「凪」。世論調査や事前の評判通り、想定内の結果となる。

 この週末に投開票日を迎える今回の参議院選挙もそうなるのだろうか。与党にも野党にも大きな追い風も向かい風も吹かず、争点となるはずの消費税や年金についても国民的議論を呼ぶには至ってはいないように見える。「れいわ新選組」のように選挙直前にでき、またこれまでの電話調査では浸透度や支持率が図れず、選挙当日までその伸びしろも予想ができないといった不確定要素はあるにはある。しかし「想定外」と言っても野党側の議席配分が多少変わるだけで、与党に危機感を与えるものとはなっていない。

 その背景には参議院の選挙制度が「選挙区」が1人区から最大6人の複数区まで地域によって異なり、また全国比例区では候補者名を書いても、政党名を書いてもよいと言ったような、衆議院選挙に比しても「ひとひねり」が加わったものであることと無関係ではないだろう。複雑とまでは言わないが有権者にとっては瞬時に理解できる制度にはなっていない。小選挙区より選挙区が広いから、候補者との接面も相対的に狭くなり、それが「自分ごと」になりにくい、選挙における「距離感」にもなることも背景にあるかもしれない。

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筆者

井戸まさえ

井戸まさえ(いど・まさえ) ジャーナリスト、元衆議院議員

1965年宮城県生まれ。ジャーナリスト。東京女子大学大学院博士後期課程在籍。 東洋経済新報社勤務を経て2005年より兵庫県議会議員。2009年、民主党から衆議院議員に初当選(当選1回)。著書に『無戸籍の日本人』『日本の無戸籍者』『 ドキュメント 候補者たちの闘争』、佐藤優との共著『不安な未来を生き抜く最強の子育て』など。