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ドイツ・ブレーメンが占う今後のEUの動向

花田吉隆 元防衛大学校教授

SPDと左派党の反目

 SPDの党内左派が分離独立してできたWASGと旧東独の流れをくむ民主社会党(PDS)は、2005年に合流し左派党を結成する。WASGは、SPDがシュレーダー首相の下、右寄りの傾向を強めるに従い、SPD左派が不満を募らせ大挙離党して結成したものだ。離党は路線対立が主な要因だったが、SPD内の人的軋轢も大きかった。出来上がった左派党にはPDSの前身、社会主義統一党(SED)の出身者等、共産主義者も多く入っており、人々はこれを極左政党とみた。こういう経緯があって独立した左派党は、SPD左派の支持票を取り込み成長していったが、それに伴い、逆に支持票を奪われたSPDは衰退していく。それがまた、SPD内に左派党に対する怨嗟を生むとの悪循環が繰り返されてきた。これまでSPDと左派党が組むことは到底考えられなかったのだ。

 SPDと左派党の反目は長く続く。しかし、左派党成立から既に14年、幹部の代替わりも進み、さしもの人的軋轢も少しずつ関係者の記憶から薄れていった。このところのSPDの地盤沈下は、いつまでもわだかまり云々(うんぬん)を言っていられる状況でないとの事情もでてきた。

注目されるブレーメンの連立

 それでも、左派党が極左、共産主義者の党との意識はドイツ政治の関係者間には依然根強く、これまで左派党は、旧東独地域はともかく旧西独地域で連立に参加することはなかった。これまで左派党が連立政権に加わったのは旧東独のブランデンブルク州、ベルリン州、チューリンゲン州の3州だけである。

 だからこそ、今回、ブレーメンの連立が注目される。ブレーメンが初めて旧西独地域としてそのハードルを乗り越えたからだ。ここに至り、ようやく人的軋轢の面でも、また、思想の面でも左派党に対するアレルギーが払拭された。ここまで来ればもうあと一歩だ。左派党がSPD、緑の党と組んで連邦レベルで連立に参加することも不可能でない。

 しかし、ハードルが乗り越えられたからといって、直ちに、左翼陣営3党の連立が連邦レベルで成立するとは限らない。緑の党はキャスティングボートを握る立場にあり、どちらの側につくことも可能だ。「CDU/CSUとの連立」は緑の党にとり、常に一つの選択肢である。実際、2017年の総選挙後の連立交渉で、緑の党は「CDU/CSU、FDPとの3党連立」に前向きだった。この時はFDPが参加を拒み連立は頓挫したが、次の総選挙で「CDU/CSUとの2党連立」または「FDPも入れた3党連立」を選択する可能性は依然残る。現在、世論調査で、緑の党とCDU/CSUは拮抗しており、緑の党が「中道右派のCDU/CSU側」と「左翼陣営3党の連立」のどちらを選ぶかは、今後の支持率如何だ。緑の党とすれば首相ポストを取れる方を選ぶに違いない。

 もし仮に、CDU/CSUが緑の党を上回る得票を上げるなら、

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筆者

花田吉隆

花田吉隆(はなだ・よしたか) 元防衛大学校教授

在東ティモール特命全権大使、防衛大学校教授等を経て、早稲田大学非常勤講師。著書に「東ティモールの成功と国造りの課題」等。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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